伊江ドラム缶落下 降下訓練は米本土へ移せ

琉球新報社説2014年4月22日
 このままでは大惨事につながる事故がいつ起こっても何ら不思議ではない。日米両政府は伊江島でのパラシュートを使った降下訓練を直ちに中止すべきだ。
 米軍伊江島補助飛行場で17日夜、米軍機からパラシュートで投下された水の入ったドラム缶4本(計約800キロ)がフェンス外に落下した。現場は米軍の提供施設内だが、住民は自由に出入りできる。幸いにもけが人はいなかったが、人命に関わる重大事故と紙一重であり、単なる投下ミスでは到底済まされない。
 伊江島でのパラシュート訓練による降下事故は今年だけで早くも3件目だ。日米両政府は読谷補助飛行場の返還に伴い、伊江島での訓練移転に合意。伊江村が訓練を受け入れた1999年以降、今回を含め、判明しているだけで16件の事故が住民に近い距離で発生している。この小さな島が訓練地としてふさわしくないことは自明だ。
 重大事故の背後には必ず、幾つもの小さな事故や異常が存在することは、さまざまな事例からも明らかだ。日米両政府は今回の事態を深刻に受け止める必要がある。
 今回の投下事故は米軍施設の建設工事現場で発生し、休憩所や資材置き場から約15メートルしか離れていなかった。作業員は帰宅後だったが、訓練の事前通知もない中、800キロもの重量物資が、夜間に空から降って来るとは誰も想定できまい。仮に誰かが現場に残っていたらと考えただけでもぞっとする。
 パラシュートを使った軍事物資の投下訓練ですぐに思い出すのは、1965年に重さ約2トン半のトレーラーの下敷きになって女児が犠牲となった痛ましい事故だ。米軍は当時、軍用車両や模擬爆弾などを投下していた。重量物資を投下する訓練の危険性は、当時も今も何一つ変わっていない。
 伊江村は物資投下訓練を控えるよう米軍に求めていたが、一顧だにされなかった。元来、米軍は住民の声を聞く耳を持たないどころか、事故後も「全ての訓練は安全かつ適切」とするなど反省の色が全く感じられない。米軍は事故原因や使用機種も明らかにしないなど、木で鼻をくくったような対応は不誠実の極みだ。これでは危険な訓練だとの疑念が増幅するばかりだ。
 米軍基地に住民地域が隣接する沖縄ではパラシュート訓練に適した陸域はもはや存在しない。米本土で実施すべきだ。