重大事故を繰り返さないで!     

事故から1ヶ月が経ちました。
労協 国ツー季刊紙春号より
軽井沢でスキーバスが転落、多くの若者が犠牲に…
規制緩和策」を見直すことが真の安全対策!
 白銀の世界を思い描き乗り込んだ若者たち。浅い眠りに未来の夢を見たのだろうか。しかし、それは覚めることなく多くの尊い命が失われました。業者のズサンな安全管理は厳しく追及されるのは当然ですが、その都度同じような対策が講じられても重大事故は後を絶ちません。どうすればこんな悲劇をなくせるのか、こんな業者の参入を許したのはなぜかを考えてみましょう。
あらゆる分野で本格化した効率優先、競争促進策
 
旅に価格競争と安全軽視の風潮が強まる発端は、1995年の「新時代の日本的経営」(日経連=当時)と「今後の観光政策についての基本的な方向」(観光政策審議会答申)の二つの文書。いわゆる“新自由主義”が規制緩和政策として本格化するきっかけのモノでした。2000年には、経済活性化、消費者の選択肢と利便性の拡大のためとして、貸切バス事業への参入が「免許制」から「許可制」になります。その後は、国交省は事故が起きる度に、法令違反と安全管理の不備を摘発し、関連業界への安全に関する注意喚起や監査強化を謳いますが、その十分な体制がないため事実上、業者任せの“自主点検”が続いています。
 関越道事故のあと、国交省の“安全対策”は…
 関越道での高速ツァーバス事故の翌年、国交省は旅行社の任意の企画商品であるツァーバスと、公共交通として法規制の多い「高速乗合バス」を「新高速乗合バス」として一本化させました。それは、ツァーバスが安全性確保や消費者保護の面で課題があるとしながら、その「柔軟な供給量調整と価格設定」という規制緩和の考えを乗合バスにも拡げるものでした。また14年4月には業界への説明も消費者への周知も不十分なまま、運転手の労働環境改善のためとして貸切バス運賃制度の改訂を強行しました。それは、出庫前後の点検時間、回送時間・距離も利用者負担などとする「時間・距離併用運賃」という内容でした。
 事業目的を“利益”より“安全運行”に据えること
 今も、高速乗合バスやスキーバスは激安を競っています。運賃引き上げでバス需要は下がり、撤退したバス事業者も少なくありません。運転手の賃金も上がらず運転手不足も深刻です。一方、外国人観光客の急増によって地域的にはバス不足で、新規事業者の参入も相次ぎ、そこでは運転手の過重労働が常態化。今回の事故に関わったバス事業者もバス事業2年、旅行社は開業5年という新規参入企業です。事故のツァーは旅行社が企画する "募集型企画旅行"でした。ツァーの進行管理は旅行社に義務づけられてはいるのに、参加者を一個の団体に束ねる添乗員配置の法的規制はありません。ほとんどの「激安ツァー」は、ツァー管理という添乗員の仕事をバスの運転手に事実上任せているのです。運転手の精神的な加重負担は明らかです。
 過度の価格競争で消費者の選択肢はあるのか?!
 新自由主義は個人所得の低下、貧困の拡大を招き、その下で蔓延した"格安価値観"と大企業も含めた一部事業者のモラルの低下は、価格競争の歯止めをさらになくし、食や命の安全が直接に脅かされるに至っています。人命にかかわる事業では、業界への参入をまず入口で止めるのが法令であり、それを十分な態勢で厳格に点検するのが行政であるはずです。
重大事故の原因追及をキチンと!
規制緩和策」にメスを入れること!
事故を“必然化”させてはならない!