安保法廃止法案を提出 5野党、違憲と訴え

東京新聞より

 民主、共産、維新、社民、生活の野党五党は十九日午前、他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認を柱とする安全保障関連法を廃止する関連二法案を衆院に共同提出した。安保法は三月末までに施行され、法律として効力を持つようになる。五党は、「違憲」との指摘もある安保法の問題点を施行の前に国民に訴え、四月の衆院補選や夏の参院選での争点化にもつなげたい考えだ。
 五党は法案提出に先立ち、党首会談を国会内で行い、安保法の廃止のほか、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更をした二〇一四年七月の閣議決定の撤回を共通目標とすることを確認した。夏の参院選など国政選挙で与党を過半数割れに追い込むことでも一致した。
 民主党岡田克也代表は会談後、五党の選挙協力などについて「合意事項に基づき、具体化を早急に進めたい」と述べた。共産党志位和夫委員長は会見で、廃止二法案について「安保法に不安と怒りを持つ多くの国民の声に応えた法案だ。国会で真剣に審議することを求めたい」と述べた。
 廃止二法案は、集団的自衛権行使を可能にする武力攻撃事態法など関連する法律十本を一括して改正した「平和安全法制整備法」と、国際貢献を目的に他国軍支援を随時可能にする「国際平和支援法」をそれぞれ廃止するとしている。
 民主、維新両党は廃止二法案とは別に十八日、安保法の対案として領域警備法案など三法案を衆院に提出した。
◆「反対」の世論 共闘後押し
 安全保障関連法の成立から五カ月を経ても反対を続ける世論に押され、野党五党が廃止法案の共同提出で足並みをそろえた。「一強」の安倍政権に結束して対抗するために、国会共闘を国政選挙での協力に結び付けられるかどうかが今後の課題になる。
 安倍内閣の支持率は、一月末の共同通信社世論調査で53・7%と高水準を保っている。一方で「政治とカネ」にまつわる閣僚辞任や、不用意な発言などトラブルが相次ぎ、政権内に不安材料も目立ってきた。
 対する野党五党は、衆院では定数の約四分の一の計百十八議席参院では約三分の一の計八十五議席にとどまる。現状では廃止法案の成立どころか、審議入りさせることも難しい。政策面でも、かなり開きがある。例えば、維新の党は改憲を基本政策に掲げるのに対し、共産、社民両党は改憲そのものに反対だ。
 それでも安保法をめぐっては、安倍政権が昨年九月、「憲法違反」との声が国会の内外に広がる中で成立させたことに五党が一致して抗議した。これを機に、四月の衆院補選や夏の参院選に向け安保法廃止を合言葉に野党統一候補の擁立を模索する動きが各地で始まっている。 (宮尾幹成)
 この夏の参議院選挙に向けた野党統一は、はたして本当に実現するのか――?

 市民勝手連「ミナセン(みんなで選挙)」の全国各地29団体が集まり、2016年1月22日、参議院議員会館でシンポジウムが行われた。野党共闘の気運を盛り上げるべく行われたシンポジウムだったが、会場に集まった人々の鬱憤は晴れるどころか、逆に深まったと言えるかもしれない。

ミナセンシンポジウム登壇者――岩上安身(左から4人目)、はたの君枝議員、福山哲郎議員、福島みずほ議員
 「とにかくみんなで勝てる候補者を応援するための作業を進めることが、たぶん夏の参議院選挙までに非常に重要なことだと僕は思っています!」登壇者の民主党福山哲郎議員は力を込めて語ったが、参加者にはかなり白々しく響いたようだ。「勝てる候補」とは、民主党やその仲間たちの推す候補であって、共産党はその輪の中にも入っていない。はなから「仲間はずれ」だ。民主党にとっての「野党共闘」とは、共産党とは協議もせず、話し合いもせず、ただ一方的に、しかも「自主的」に、共産党が候補者を降ろせ、ということだけを意味するのだ、と会場にいたほとんどの人が確信した瞬間だった。
 それは何かが違う。話し合おうとしない民主党の頑なさ、上から目線のモノ言いも、鼻についたに違いない。そんな中途半端な「野党共闘」で、自公の候補に本当に勝てるのか、という不安もよぎったはずだ。ざわめいた会場からは、「福山さん、連合はどうなのよ!?」という声も聞こえてきた。
 民主党の支援団体・連合の神津里季生会長は、15日、「候補者を後から共産党が応援することはあるかもしれないが、最初から共産党がその輪の中にあるというのは違う」と、共産党含めた野党共闘に水を差すような発言をしていた。「共産党を輪の中から締め出せ」という「村八分」的な発言のその狭量っぷりからは、絶望的なまでに選挙を敗北に導くニオイが漂っていた。カビ臭い「敗北臭」とでも言うべきか。参加者からの発言は、そうした連合や民主党への明らかな苛立ちの表れだった。