熊本に元気と明るさ届ける にっぽん丸「天草・軍艦島周遊クルーズ」(2)

 今クルーズは食の面からも熊本を応援した。初日のディナーには天草特産の車エビのにぎり寿司、2日目には天草大王や黄金のハモなど熊本の食材づくし。本渡港の上陸時には、にっぽん丸の中山勝利総料理長がカンパチなどを直接仕入れて船に積み込んだ。
 食で復興を応援
特に、ちり鍋で出された黄金のハモはおかわりができ、追加注文する乗客も少なくなかった。

にっぽん丸天草の食材を船に積み込む
 天草出航後には船内で市場がオープン。天草漁業協同組合の植田弘一郎さんと平松功太さんが乗り込み、黄金のハモや車エビを市価より割安で販売した。

にっぽん丸船内にオープンした漁協直営店
 植田さんは「震災以降、漁獲量は不安定で、販売も本来にはほど遠い状況です。にっぽん丸に来ていただいたのは本当にありがたい。漁船がずっと追いかけてきたのは、本当に感謝している気持ちなんです」。

熊本に元気と明るさ届ける にっぽん丸「天草・軍艦島周遊クルーズ」(1)

商船三井客船の「にっぽん丸」(2万2472トン)が5月25日、熊本県天草市の本渡港に寄港した。4月の地震後、熊本県内にクルーズ船が入港するのは初めて。熊本産の食材を大量に仕入れたほか、乗客も天草観光を楽しみ、熊本の復興を応援した。
地元と乗客の交流深まる
 クルーズは広島港発着で2泊3日の「天草・軍艦島周遊クルーズ」。震災から日が浅く「熊本へ寄港していいのか悩んだ」(にっぽん丸関係者)そうだが、広島をはじめ全国から330人が乗船した。
 波穏やかな瀬戸内海を進み関門海峡関門橋をくぐり、世界文化遺産軍艦島を間近に見学。特に軍艦島は島の周囲を1周半して眺望、クルーズならではの体験だった。

クルーズのハイライト軍艦島を見学
 天草・本渡港では直接接岸せず、テンダーボートで乗客を運ぶ。港に上陸すると、天草の旅館女将がお茶や菓子を振る舞い、牛深ハイヤ踊りが披露され乗客を歓迎した。震災の影響を微塵も感じさせず、地元の人たちも乗客も笑顔で言葉を交わす。このあと、乗客はイルカウォッチングなどのオプショナルツアーに向かった。

本渡港沖に停泊するにっぽん丸
 船内では、にっぽん丸の歓迎セレモニーが行われた。天草側からはにっぽん丸に焼酎や海苔の特産品が贈られ、にっぽん丸からは乗客330人から集まった義援金、記念プレートが手渡された。
にっぽん丸乗客から寄せられた義援金を手渡す

にっぽん丸地元を挙げて乗客を歓迎
 にっぽん丸の川野惠一郎GMは「観光することが不謹慎ではないかと心配していましたが、温かく迎えていただき感激しています。天草に寄港して本当に良かった」。
 熊本県天草広域本部の三角浩一本部長は「お越しいただきありがとうございました。天草から熊本の元気をお届けします」と話し、観光に支障がない天草を発信してほしいと依頼した。

本渡港での停泊時間は8時間ほど。出航時には地元の漁船が見送りに並走し、多くの乗客がデッキから手を振った。
にっぽん丸天草を出航し何隻もの漁船が並走
 商戦三井客船営業グループの松本士郎課長は「私たちのクルーズは、寄港地での交流を促す着地型、地旅だと思っています」と胸を張った。