モロッコ紀行その4

5月22日 フェズ→エルフード
 今日は終日大移動。きっとバスの中でずーと寝ているのだろうなとキューバを想像していた。余談ではあるが、添乗で行った時のキューバの大移動もすごかった。サトウキビ畑の中を一日中バスは走り、何時間走ってもサトウキビ畑が続き、眠って目が覚めてもまた同じサトウキビ畑なので、終いには、皆さん起きようともせず、死んだように眠りこけていたっけ。
 しかし、モロッコは違った。昼食とトイレ休憩を除くとほぼ7時間バスで走っていたことになる。でも飽きなかったし、眠ってもいなかった。アトラス山脈越えはいくら走っても次々景色が変わっていく。見とれてしまい、眠る暇も無い。明日もアトラス山脈を越えることになるのだが、今日はモワイアン・アトラスという東にあたる山脈越えである。とても人が住めそうに無いようなところで、実際に家も無いのに、細い少年が小さな羊をパラパラと何頭か連れているのを見たり、どこからかロバとその上に乗ってる幼子と小さな娘とおばあちゃんが出てくると、バスはストップする。おばあちゃんが差し出す手にドライバーはお金を握らす。これはイスラム教の施しをさせていただく行為だ。私たちは最初「ゲッ」と思ったが、それはごく普通の行為なのだ。その証拠に、ビューポイントでバスが止まるとわらわらと3人の青年が出てきて、草で作った飾りを売りにきたとき、ドライバーは、何もしなかった。山といっても草原の中に高級住宅が現れたりもした。また、土で出来た家の町並みがあったり、ぽつんと土の家があったりする。その家もその土地の色をしている。黄土色だったり、黄色っぽかったり、茶色っぽかったり。後で聞いたのだが、土をこねた日干し煉瓦や麦わらでつくるから色が様々なのだ。雨が降るとどうするのか聞くと、また同じように壁を塗るのだそうだ。そうすると屋根は? 心配することはなかった。縦横と枠に木または竹を組み、その上をやしの葉で覆い、土を重ねるからなかなか丈夫に出来ているし、気候も365日のうち28日くらいは雨が降らないそうだ。日本のローンを組んで土地や家を購入することを考えると笑いたくなるほど簡単だ。
 書きつくせないほどいろいろな光景をみて、エルフードに向かう。そのうちに今度は草原ではなく、グランドキャニオンのような景色が現れ延々と続く。大昔、ここは海だったようだ。遠目にも幾重にも重なった地層が見える。終点のエルフードに着くと、先に案内してくれたのが、なんとその地層から出てきたアンモナイト三葉虫の化石を打っている工場だ。でも一面においてある化石をみて、あまりにも沢山あるので、ありがたみが無いように思ってしまう。とはいえ、日本では売ってないので、値切りながら、アンモナイトのお皿などを買ってしまう。
明日は砂漠からの朝日を見るということで、早く寝る。(M.IWABUCHI)