毎日新聞5月25日朝刊から

 新型インフルエンザ:中小旅行業者が苦境 先週2日間で2億3000万円損失 /兵庫
 ◇金融危機にインフル加わり 
 新型インフルエンザの感染拡大で修学旅行や遠足、大手企業の会議や出張などの中止・延期が相次いでいる。県内の中小旅行業者30社でつくる「県旅行業協同組合」によると、感染者が見つかった先週初めの2日間(18、19両日)だけで損失は約500件計2億3000万円。同組合の松岡武弘理事(63)は「世界的な金融危機新型インフルエンザが追い打ちをかけた。泣き面に蜂で経営が立ち行かない」と危機感を募らせる。
 松岡理事が社長を務める旅行業者「国際ツーリストビューロー」(神戸市中央区)は、京阪神を中心に労組や市民団体の会議や学術大会の仕事を受注している。金融危機の影響で、昨年は売上額が2割程度減った。そこに新型インフルエンザ。旅行など20件約400万円分がキャンセルになった。
 主に、小学校の修学旅行や遠足の仕事を請け負っている組合加盟業者は、6000万円近くの損失を負ったという。「このままでは死活問題。休校分、夏休みが短縮されたらたまらない」などの声が相次ぐ。
 ◇修学旅行取り消し、大手キャンセル料なしが追い打ち 
 キャンセル料請求も悩みだ。大手旅行業者は先週、大阪府兵庫県内の学校に「自治体の判断で臨時休校になった場合、キャンセル料は取らない」と伝えた。中小業者には寝耳に水の話で、実際に学校とキャンセル料支払いを巡って交渉中の業者からは「王者のスタンドプレーが中小を苦しめている」との声が寄せられた。松岡理事は「加盟社は社長と家族ら数人規模の中小企業ばかり。支払い期限の月末を控え、首をくくる業者も出てくる。行政の支援が欠かせない」と訴える。
 組合は21日、井戸敏三知事あてに損失補てんや融資を求める要望書を出した。要望書は、感染防御のために外出や旅行自粛などの行政指示は必要だとする一方で、「間違いなく生じる“負の側面”への対策を打ち出すことが行政側に強く望まれる」としている。さらに、大手ではなく中小企業への迅速な補償や融資こそが大事だと訴えている。県観光振興室は「キャンセルが相次いで困っているという声が多数届いている。内容を精査して対応したい」と話す。
 松岡理事は「兵庫県の市場は、震災以降沈みっぱなし。本当の意味での復興にはほど遠い」と指摘。それでも、「震災もくぐり抜けてきた。負けてたまるかいう気持ちでやる」と、気を引き締めた。