神戸の観光について その3

(by T.MATSUOKA)


4.神戸の「観光」資源と集客価値の再確認
①六甲山と播磨灘にはさまれ類いまれな海と山の自然景勝地を併せ持つ立地条件。
平清盛の大和田の泊まり修築、日宋貿易に始まり、開港をめぐる幕末における諸外国との折衝、明治元年の兵庫開港によって、中国や西欧など「異国文化」が溶け込み、自然条件も加味された独特のエキゾチックな情緒を醸し出していること。
③各地で努力されている観光資源発掘、街おこしはオンリーワンとして、“ひかり”を当てる。
④震災の被害実態、復興へのたたかいの教訓。風化させないための継続的発信基地としての価値。
⑤近隣観光地に存在する日本一、世界一、オンリーワンなどを含め「広域周遊型企画」により付加価値を高める。(宝塚歌劇、手塚記念館、甲子園球場、鳴門の渦潮など)

5.神戸の観光の「課題」  理念の明確化、持続可能な「観光地神戸」を!
①人々はその歴史、発展、暮らしをみせたい、また未知の世界に憧れ、知らない土地を訪ねたいと想う。この想いが交わりそこに喜びと感動を伴う発見、交流が生まれます。それこそが心と体を豊かにリフレッシュし、生活と人生に貴重な彩りを添え、時には人生の大きな転機にもなりえます。観光政策の理念の根本に据えるものです。「個」の満足を基礎に「全体」の満足があります。
②観光、旅行は「双方向」でなければなりたちません。観光地であればなおさら、神戸と同質または全く異質の観光地への旅行奨励策など、住民の域外観光の活性化策を講じることが大切です。誘致策だけでは、限られた旅行需要(財政的に)の下で、全国各地の誘客競争が激しくなり、ムダな投資、ムダな競争の結果となる地域が増えるのは明らかです。住民の生活安定があってこそ観光地としてのホスピタリティが発揮でき、「旅行者としての経験」を積んでこそ独自の差別化した観光地の住民たりえます。
③誘致を域外からだけでなく、域内、居住者の誘致拡大策を具体化し、日常化した観光客と非日常化した居住者が同じ場所で過ごすことなどが観光地としての持続力になります。
④高齢者を含む家族・グループ、社会的弱者に優しい街づくり、観光地づくりの視点が世代を越えた「観光地」神戸の持続力になります。
⑤地域の自然、歴史、たたかいを住民の力に依拠して観光資源、集客価値として発掘し、数多くの企画にオンリーワン企画として光を当て、スケールメリットの発想を排し、少企画大量集客から多企画少量集客施策へ転換させる観光行政が求められています。

6.地元住民と中小業者による「観光地」神戸の持続力の展望
 地元の中小旅行業者の団体(兵庫県旅行業協同組合)は、巨大観光開発依存、特定地域への送客集中、便乗的企画など、これまでの観光業界のあり方を見直す中から…?地域ニーズの充足(地域の悩みの共有、観光資源の発掘)、地域の接着剤の役割、企画力、集客力などの機能の発揮 ?旅行者と地域生活者のニーズの結合 ?規模の利益を求めない永続性の追求 ?他府県企画との相互協力 ?主体性を堅持しつつ行政とも連携を深める方向を打ち出しています。
このことは、?中小旅行業者の21世紀の業態改革戦略=地元民の域外観光だけでなく域外客の地元誘客業態の開発=の突破口。?旅行企画の質、商品流通システムの転換など観光業界の構造改革=大手旅行社の企画商品を中小旅行業者が販売するという現在の流通でなく、中小旅行業者の企画を自らの業界全国組織を通じて、また全国チェーンを持つ大手旅行社が販売する全く反対の商品流通=のきっかけ。?日本経済・国土の釣合の取れた地方格差の少ない健全な発展への貢献等々にもつながります。こうした方向への取り組みへの支援が神戸市には求められます。