米欧ほか8ヶ国、航空業界再編の可能性拡大−国籍条項廃止、外資買収を促進

KokusaiTourist2009-11-16

[業界紙トラベルビジョンより 掲載日:2009/11/18]
 国際航空運送協会(IATA)によると米国と欧州連合など8ヶ国・地域は11月16日、2国間航空協定の国籍条項の撤廃を進めることを宣言した。現在、定期航空路線を開設するためには原則的に2国間で航空協定を締結する必要がある。国籍条項は航空協定に含まれ、路線の運航を2ヶ国の政府または国民が実質的に所有する航空会社に限定するもの。例えば、日本がある国と航空協定を締結した場合、日本は相手国に対して、相手国の政府か国民が資本の過半数を所有する航空会社の就航を求める権利を持つ。
 今回宣言にサインしたのは米国と欧州連合のほか、チリ、マレーシア、パナマシンガポール、スイス、アラブ首長国連邦で、宣言では「相手国が自国の航空会社への外資導入を促進する方針を尊重」すると明言し、国籍条項を「撤廃すべきであり、そうでなければ権利を行使しない」とした。これはつまり、外国資本によって自国の航空会社が買収されても運航路線を維持できるようになることを意味し、各国の航空会社の買収が容易になる。
 国籍条項などの規制が航空会社の財務構造を弱体化しているとするIATAは、国籍条項の廃止は国境を超えた航空会社グループの形成につながるとしており、航空業界の再編が進む可能性がある。宣言に法的な拘束力はないものの、8ヶ国・地域で全世界の商業航空市場の約60%を占めるといい、IATAでは「航空業界がめざすべき方向を明示するものであり、他国にとっても無視し難くなる」と指摘。今後も他国の参加を呼びかけていく方針だ。
 日本では、事業認可の条件として外国資本の比率を3分の1に制限している。2007年度から2008年度にかけては、公正取引委員会公取委)の「政府規制等と競争政策に関する研究会」(規制研)で航空協定への独占禁止法適用の是非を議論していたが、航空会社の経営環境悪化などの理由で立ち消えとなっている。
 なお、宣言はこのほか、「市場参入の自由」「運賃設定の自由」を重視することも盛り込まれている。市場参入では、「インフラ面での制約にかかわりなく、参入する航空会社数を制限する条項の廃止を考慮すべき」としたほか、運賃設定の自由も同様に、「タリフの申請を求める条項」や「市場原理にのっとった運賃設定を疎外する条項」の廃止ないし権利の不行使を宣言した。