内部留保を労働者と社会に還元し、内需の拡大を! その7

 労働問題総合研究所は11月18日、「経済危機打開のための緊急提言」を発表しました。数回に分けて転載致します。

【参考】試算の具体的内容
最低賃金の「時給1000円」への引き上げ(表A)







《試算方法》
 (1)時間当たり賃金の分布データは、厚労省 「平成19年版賃金構造基本統計調査報告」によって、10円刻みの「時給」と「該当人数」の表から、1000円未満の人数をカウントした。
 (2)「時給1000円」未満労働者は、一般労働者、パート労働者それぞれについて計算した。調査された一般1051.4万人(内、時給1000円未満313.8万人)、パート602.1万人(同437.5万人)を、「毎勤統計」の5人以上の一般・パート比率を利用して全労働者(5524万人)に換算した。
《試算結果》
 最低賃金を時給1000円に引き上げることによって、一般の労働者(そのうち時給1000円未満の労働者)の賃金は、平均12万9797円/月から14万9142円/月に、1万9345円/月引き上げられる。なお、厚生労働省の「毎勤統計」(2008年)にもとづき、1月の出勤日数20.4日、1日の労働時間8時間18分、年間労働時間2031.6時間、ボーナス年間3.2ヶ月分として月額を計算した。
 パート労働者(そのうち時給1000円未満の労働者)の場合は、賃金が、平均7万6048円/月から9万2089円/月へ1万6041円/月引き上げられる。なお、同じ厚生労働省の「毎勤統計」(2008年)にもとづき、出勤日数16.2日、1日の労働時間5時間42分、年間労働時間1111.2時間、ボーナスは、年間0.38ヶ月分として計算した。
 (2)最賃を1000円に引き上げた場合の生産波及効果は、1次、2次あわせて国内生産を13兆3700億円拡大させることになる。これに必要な原資は5.87兆円である。
 最低賃金に該当する人は、時給1000円になっても、総務省の「家計調査」、「年間収入十分位階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出」の第1分位「世帯主の収入258万円未満」から抜け出せない。この分位では、収入の98.8%が家計消費に回り、(消費支出/世帯主の収入。消費支出/可処分所得では89.9%)賃金引上げによる内需拡大効果が大きい。
 そして、「家計調査」から、収入増の結果どのような費目に対する支出が増えるかを調べ、次に、産業連関分析によって、究極的な各産業に対する生産誘発額を計算してみると、対個人サービス、食料・飲料・たばこ、運輸・通信、光熱水道、軽工業品など、比較的中小企業の多い分野の生産活動をよく誘発する。したがって、最低賃金の引き上げは、中小企業の経営にプラスの効果がある。

サービス残業の根絶(表B)

《試算方法》
 (1)サービス残業時間の算出については、事業所調査である厚生労働省「毎月勤労統計調査」と世帯対象の個人調査である総務省労働力調査」との差を根拠にした。「毎勤統計」によれば、一般労働者の年間総労働時間は2017時間だが、「労働力調査」では2133時間となっており。その差115時間が労働者一人当たりの年間サービス残業時間となる。
 (2)労働者一人当たりサービス労働時間を労働者数に乗じてサービス残業総労働時間を計算し、これを一般労働者の年間労働時間で除して雇用者増加数を算出した。その際、労働者数については、「毎勤統計」の事業所規模30人以上に働く2035.9万人に限定して計算し、雇用者増加数の計算に当たっても、30人以上に働く一般労働者の年間労働時間数を用いた。
《試算結果》
 非常に控えめな試算だが、それでも新たに116.5万人の雇用が創出されることになる。そのために必要な賃金原資は5兆6000億円である。