内部留保を労働者と社会に還元し、内需の拡大を! その2

 労働問題総合研究所は11月18日、「経済危機打開のための緊急提言」を発表しました。数回に分けて転載致します。
再録
『経済危機打開のための緊急提言』
内部留保を労働者と社会に還元し、内需の拡大を!


はじめに――経済危機下でも増大した内部留保の異常
 2008年9月、米証券4位リーマン・ブラザーズの経営破綻を機に世界経済は恐慌状態に陥り、先進資本主義国の経済成長率が軒並みマイナスに転化した。
日本のGDP(国内総生産)も、前年同期に比べて、2008年10〜12月期▲3.9%、2009年1〜3月期▲7.4%、4〜6月期▲6.9%と大幅に低下した。 ところが、財務省「法人企業統計」によると、同時期の法人企業(277万4434社、全産業、全規模、金融・保険業を除く)の
売上高も、▲11.6%、▲20.4%、▲17.0%とGDP以上に低下し、
経常利益にいたっては、▲64.1%、▲69.0%、▲53.0%と半分以下に激減しているにもかかわらず、。
内部留保は、+1.7%、▲0.6%、+1.4%と、増加が続いているのである。


「法人企業統計」・・・資本金10億円以上の企業は全数調査。資本金10億円未満の企業は層化抽出調査し、サンプル理論に基づいて全企業を推計。内部留保は、企業の生産活動によって新たに付け加えられた価値(「付加価値」≒GDP)の一部が、企業内部に滞留することを意味し、過度の増加は、国内需要の不足をひき起こして経済を不況に陥れることになる。
内部留保・・・利益のうち,配当や役員賞与などで流出せずに,企業内部に留保した部分の累計額。貸借対照表では利益準備金,任意積立金および未処分利益の合計額(有斐閣「経済辞典」)であるが、倒産引当金、退職給与引当金資本準備金なども、生産された価値が企業内部に滞留する点では同じなので、本分析は、それらを加えた広義の内部留保により行っている。

 今回の経済危機について、自民党や財界の幹部は、「アメリカ発の世界同時不況」と、あたかも天災ででもあるかのような言い方をしているが、自公政権の「新自由主義的」経済政策と大企業の近視眼的な利益追求主義の経営によって、
内需が縮小し、外需に対する依存度が高まっていたことが根本的な原因の一つである。だからこそ、他の国以上に日本経済の落ち込みが大きく、回復も遅れているのである。
 それを表すのが、今回の分析で明らかになった内部留保の異常な増加である。昨年来、
経済危機の下にもかかわらず積み増しされてきた内部留保は、「派遣切り」「非正規切り」、さらには、正社員に対する希望退職などの、首切り・リストラをおこなうなかでため込んだものであり、そのような経営が、日本経済を、
雇用の減少→賃金低下→内需縮小→国内生産縮小→雇用の減少という“負の悪循環”に追い込み、経済の落ち込みを加速している。
 日本経済の“負の悪循環”を打開し、
内需拡大→国内生産増加→雇用の増加→賃金収入の増加→内需拡大という“プラスの循環”に変えるためには、
内部留保の過度のため込みをやめ、利益を労働者と社会に還元して、需要と供給のバランスを回復しなければならない
 いま、そのための
適切な政策と、大企業にたいして、その実現を迫る強力な労働組合の運動が求められている