『事業仕分け』と『観光行政』の“対決”の【怪】

下記はWEB版業界紙トラベルビジョンより
観光予算の事業仕分け、訪日外客3000万人事業「半減」、観光圏は約8割減に
[掲載日:2009/11/30]
 政府の行政刷新会議は11月27日、「訪日外国人3000万人プログラム第1期」と「観光を核とした地域の再生・活性化(観光圏整備事業)」の事業仕分けを実施した。結果は訪日外国人3000万人プログラム第1期が「半額」、観光圏整備事業が「8割程度の削減」で、11月26日の「休暇取得・分散化促進実証事業」に続き、要求通りの判定は得られなかった。2件に共通して、評価者からは観光の重要性には理解を示す声が多く、「これからの産業として屈指の柱だと考えていて、観光予算が削減されたと思われるのは心外。本当に大事にしてほしいし期待しているからこそ、その制度に関してはシビアに考えていることを理解してほしい」との意見もあった。
 特に指摘されたのは「マーケティング&リサーチ」の不足で、「それをしっかりやった上で政策を打たなければならないのは当然。中身についてしっかりと見直したかたちで積極的な観光政策を取っていただきたい」といった注文が付いた。具体的には、例えば訪日外国人のプロモーション展開案で、対象市場や方法論の絞込みが不十分とされたほか、過去に予算額が変化していないにも関わらず訪日客が増加していることから、「(予算の増減ではなく)マクロ経済による影響の方が強いのではないか」といった指摘もあった。
 訪日外国人3000万人プログラム第1期事業では、事業費として189億5400万円を要求。特に海外でのプロモーション展開に175億5000万円を投じ、第1期の目標である2000万人の達成をめざす考えであった。これに対して、13名の評価者のうち予算計上見送りが4名、予算要求縮減が9名。縮減幅は半額が5名で3分の1程度縮減が1名、その他として4割減が1名、7.5割減が1名、9割減が1名であった。
 一方、観光圏整備事業では、32億1700万円(10月15日の概算要求再提出時は108億3690万円)を要求。廃止が4名、予算計上見送りが2名、予算要求縮減が7名。7名の縮減幅は、半額が1名、6名のうち4割減が1名、8割減が4名、相当程度の絞込みが1名となった。ここでも同様に政策の効果に疑問を呈する評価者が多かったほか、前年度の予算執行率の低さも指摘された。



観光分野初の事業仕分け、休暇取得分散化は「大幅縮減」
[掲載日:2009/11/27]
 観光関連分野では初となる事業仕分けが11月26日に実施された。対象となったのは「休暇取得・分散化促進実証事業」で、結果的に「予算要求額の大幅な縮減」の判断が下った。廃止と評価した仕分け人がいた一方、「事業自体の必要性はある。目的自体は観光に寄与する」とも評価された。また、「この事業自体が仕組みづくりの第一歩なのであれば、第一歩としてのあり方に再検討の要請がある」とのコメントもあり、事業自体の洗い直しが提示された。
 今回の実証事業は、子供と親の休暇をマッチングさせて家族の時間を作り出すことが観光につながるとの考えに基づき、制度化に向けて観光庁が主体となってその効果や課題を検証するもの。ただし、観光促進効果ではなく家族の時間を作り出すことが主目的であるため、「子供の休みについてなら文科省、働き方なら厚労省になる。なぜ国交省の管轄なのか」「観光促進がねらいなら別のアプローチが必要では」などの発言がなされた。
 これに対して観光庁側は、休暇取得がワーク・ライフ・バランスの一部であり、「政府全体で取り組む中のひとつとして動いている」と説明。さらに、独自に実施したアンケートで、家族の時間が増えれば旅行したいと答えた親が半数を占めたことなどを挙げ、休暇取得の促進が観光にプラスになることをアピールした。
 なお、休暇取得についての議論の機会自体がこれまでほとんどなかったことから、「議論できたことだけでもよかった」と話す仕分け人もいた。
 最終日となる27日には「観光を核とした地域の再生・活性化事業」、「訪日外国人3000万人プログラム第1期事業」などの観光関連分野について事業仕分けが実施される。