烏合の衆

高砂市 臨済宗妙心寺派龍沢寺のご住職水田全一師より随筆“山家妄想No.123 2012.01.01”を届けていただきましたのでご紹介します。     
共通の原理・政策を持ち、一定の政治理念実現のために、政治権力への参与を目的に結ばれた団体。(広辞苑
共通の理念と政策で結合される、階級のもっとも活動的な人々の結集体で、政治権力の獲得、または維持を根本的な目的とする政治結社をいう。(中略)政党の本質的性格は、それがどの階級の基本的利益を代表しているか、また『政治的広告』によらず、何をしているのかという実際の行動によって決められる。(社会科学総合辞典 新日本出版社
辞典にみられる「政党」の定義である。
いずれを見ても「共通の」原理(理念)・政策によって結集することを大前提としているが、現在日本の政権政党である民主党はこの大前提にかなっているといえるのだろうか。
現在日本の最大の政治課題といえば、福原発事故の収束である。
その終息を担当すべき最大の責任を負う閣僚が、二人つづけて就任九日目にして辞任を余儀なくされた。

菅内閣 松本龍復興担当相と野田内閣 鉢呂通産経財相である。
辞任の理由は、いずれも被災地の人心を逆なでする思い上がった態度・発言と、被災者の苦難を理解していないとしか思えぬ幼稚な発言と行動である。
前者は、知らぬ者のないともいえる松本治一郎という部落解放同盟の功労者の孫にあたり、九州福岡の建設業界第一の松本組の幹部である。
被差別者の権利回復を最大の課題として組織された解放同盟と、地域最大の建設企業との融合に違和感を感じるのは、わたしの個人的感覚だとはしても、野田首相指名早々に日本経団連の会長をして「ジャパンドリームの出現だ」と言わしめた政党は理念のどこに、結集の足場を持っているのだろうか。
後者は北海道の農協組織を基礎にして政界に登場したという。農林水産相としての適格性はともかく、専門外の通産経財相として任命されたことへのストレスが一連の発言・行動の原因ではないかという憶測もある由である。
なぜこのような任命が行われたのか。党内各勢力の均衡を意識した結果だといわれている。さすればこの政党は「共通の原理・政策」の結集軸を持っているのかということが問われているということであろう。党内に均衡を意識しなければならない「異なった原理・政策」を持つ集団の存在を告白しているからである。
この政党の総理大臣補佐官に任命されたという人物から「プレス民主 号外」が送り付けられてきた。上質紙カラー印刷の立派なリーフである。
わたくしがかつて教員をしていた関係から送られてくるのであると思われるが、彼は兵庫県職員組合を足場にして政界に進出した人物である。兵庫県職員組合日本社会党新進党など、非自民ではあるがはっきりとしたスタンスを持たぬ政党支持を機関決定し、組合員の政党支持自由の原則を踏みにじってきた、連合傘下の組合である。
パンフにはこうある。「新政権スタートのポイントは、輿石東参議院議員を党の幹事長に抜擢したことです。・・・その幹事長采配により党が一丸となってこの国難を乗り切る体制をつくることができたと思います。」
輿石東氏もまた教職員組合を足場にして参議院議員となった人物であると承知している。
日教組」に結集する教職員組合はいわゆる逆コースに乗り、いまやこの国の体制を維持する勢力の中心となっている。労働組合を名乗りながら財界と一体化の道を歩む「連合」の有力な一員である。その本質を覆い隠して幹部たちは組合員に「一党支持」を強制することによって政界進出を果たすのである。
そして、彼が仲間と称する国会議員たちには兵庫県選出のものも含めて「小沢チルドレン」が、多数存在する。かれらのペアレント小沢はいかなる人物か、説明するまでもなかろう。かれらと「組合」に結集している教職員と「共通の原理」は存在するのか。政策を一致させることができるのか。
このような疑問に答えることなしに「はげます会」への入会はともかく、「サポーター」登録を要求することができるだろうか。ましてや「民主党党員」への登録を要求し、FAXでそれを受け付けるなどというのは、読者をバカにしているとしか言いようがない。
「党員」とは地域や職場で活動をともにしている者が、「共通の原理・政策」を確認して政党に所属することにより成立できるものであろう。もちろん政党の側からの厳格な資格審査を経て入党を承認されるものであるはずだ。この政党の党員であると表明して活動している人物を、わたくしの周りに発見することは残念ながらなしえていない。
政党本部自身も党員数の公表すらしているとは承知しいていない。所属党員がいくらの党費を拠出し、支持者にカンパを訴えていくらの収入を得ているのか、機関紙をいくらの読者に届けているのかも聞いたことがない。要は下部に基礎組織を持たぬ実態だ。
したがって「政党助成金」に党財政の大半を頼り、大企業からの献金やパーティ会費に依存する体質は、自民党と変わらない。
10月4日のしんぶん 赤旗の報じるところによると、昨年民主党本部から東京選挙区の蓮舫議員は三千万円の政党助成金を受け取っているが、使い残しを国庫へ返納せず2534万4414円を「基金」にため込んでいるという。しかも彼女は受け取った政党助成金から200万円を参議院選挙の公認料としてお手盛りで受け取っていたという。「事業仕分け」とか称して、官僚たちに向かって居丈高に振舞っていた人物がこのざまだ。
しかも聞くところによると、この政党は「綱領」を持たぬらしい。
「綱領」を持たぬということは、結集の基本軸・「共通の原理・政策」を示していないということになる。彼ら民主党を名乗って集っている者たちは、いったい何者なのか。少なくとも民主主義社会の政党員と公言することはできまい。
このような人々の集まりを、古来「烏合の衆」と日本では呼んできたのではなかったか。(2011/10/03)