辺野古アセス 移設不可能の意見重い
北海道新聞2月21日社説より

 沖縄の米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向け政府が沖縄県に提出した環境影響評価(アセスメント)の評価書に対し、仲井真弘多(なかいまひろかず)知事がきのう防衛省沖縄防衛局に意見書を提出した。
 「生活環境および自然環境の保全を図ることは不可能」と指摘し、辺野古への移設は「事実上不可能」との考えを示した。
 意見書の内容にかかわらず政府は次のステップである辺野古の埋め立て申請に進むことはできる。だが埋め立て許可の権限は知事にある。移設計画を強引に進めても地元の理解は得られないだろう。
 政府は知事の意見を十分尊重し辺野古への移設計画を見直すべきだ。
 政府は2004年に方法書を提出してアセス手続きに入り、09年に準備書を提出した。評価書に対する知事の意見書が出たことでアセスは最終段階を迎えることになる。
 アセスの過程で目立ったのは政府の強引な姿勢だ。方法書、準備書に対してはデータ不備などの指摘が相次いだ。評価書は昨年12月、沖縄防衛局職員が未明に県庁に搬送するという異例の方法をとった。
 こうした進め方が県民の不信を増大させたことを忘れてはならない。
 評価書の内容で生活環境への影響が心配されるのは垂直離着陸輸送機「MV22オスプレイ」の配備だ。開発段階で事故が多発し安全性が疑われている。騒音も現在普天間にある中型ヘリCH46を上回るとされる。
 政府はオスプレイ配備に伴うアセスは不要としてきたが、評価書段階になって初めて配備を明記した。このためオスプレイについての関係市町村長や住民の意見が聴取されていない。不十分な対応ではないか。
 絶滅危惧種ジュゴンなど生態系への影響について評価書は「直接的な影響はない」などと記述した。だが有識者らによる県の審査会は根拠が乏しいことを指摘した。
 移設先は県の指針で「自然環境の厳正な保護を図る区域」に指定されている。移設を実施すれば自然環境の回復が不可能になると懸念されている。政府はさらに詳しく調査して慎重に判断するべきだ。
 政府は今秋にも埋め立て申請を行って年内の着工を目指す姿勢を崩していない。だが知事の意見書は辺野古移設計画の難しさをあらためて示した。
 沖縄の米海兵隊のグアム移転を普天間問題と切り離すことになり、辺野古移設を盛り込んだ日米合意も揺れている。
 野田佳彦首相は26、27の両日、就任後初めて沖縄を訪問する。沖縄の声を直接聞いて移設計画の見直しへと進むべきだ。