電力労働運動近畿センターがアピール

東日本大震災福島原発事故1周年にあたってのアピール                                     2012年3月11日
電力労働運動近畿センター

1.はじめに
あれから1年、東日本大震災は、死者・行方不明者約2万人、家屋損壊約103万戸、避難者数34万人など未曾有の被害をもたらしました。この間、震災復興に全力を注いでこられた皆さんに心から敬意を表します。
福島第一原発メルトダウン過酷事故によって、高濃度放射線被ばく下、延べ8万人の作業員が、肉体的・精神的に生命の危険に晒されつつ「収束」への犠牲的作業に、今なお従事されていることを大変憂慮しています。
福島県では、県民198万人のうち県内避難3万人余、県外避難6万5千人もの人達が福島原発事故の影響で住み慣れた故郷を離れての生活を強いられ、いつ故郷に帰れるのかわからない不安な毎日を送っています。さらに1万5千人もの小中学生や園児が転校を強いられています。深刻なのは、今なお出続けている放射線被害の実態が全生活の根底を揺るがしていることです。避難と脱出・失業・生活破壊・完全除染の見通しも見えず、復興そのものが困難となり、人々は難民状況になりつつあることです。まさに、憲法前文が書く「・・ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利」が完全に破壊されてしまったのです。
それだけに、これらの事態を招いた永年にわたる原発推進者たちの社会的・人道的・倫理的な無責任さは強く非難されるべきで、その反省とともに元の美しい日本の自然国土へ全力で戻す意志を表明すべきです。

2.この1年間で見えてきたこと
 福島原発事故は時間的・空間的・社会的に限定できない「異質な危険」を伴っていることを日本の国民をはじめ世界中にあらためて明らかにしました。そして原子力技術が未完成であり、放射能を閉じ込めることが現在の技術では不可能であることを国民は目の当たりにしました。まさに日本の原発政策の歪みがさらけ出されたのです。
その内容は次のような点です。
原発が出来た当初から政府、電力会社、原子力産業、学会、マスコミなどの「原子力利益共同体」が原発政策を推進し、批判する人達を徹底的に排除してきた。
②「安全神話」のもと過酷事故にたいする供えを怠ってきた、原子力安全委員会・安全保安院などの政府機関の偏向が大きな災害を引き起こしたとも言える。
③政府の危機管理能力が欠如し、国民に対する正確な情報はまったくなく、万が一の避難への準備体制も怠っていたことが放射能被害を大きくした。
④政府は電力会社・原子力メーカーまかせの原子力行政を行い、電力会社・原子力メーカーは、7〜10次までの重層的請負制度を駆使し、責任体制も明確にせず、検査なども含め事業者丸投げ的運営を行ってきた。
⑤政権の劣化等もともなって、この過酷事故の原因究明も、4つの事故調査委員会がおこなうなど、混乱の極みで世界から非難されている。そのため1年たった今でも、福島第一原発廃炉に、30〜40年かかるとか、数兆円以上の金額が必要とか、核燃料サイクルの行方決められない事態が続いている。
⑥「原子力立国」政策のもと、「原発はCO2を出しません」「オール電化の時代」との経営方針が、全く機能出来なくなったにも関わらず、「定期検査完了」原発の再稼働に向けた、いわばパフォーマンスとも言える「節電・計画停電」の宣伝に全力上げていること。

3.地震活動期、若狭湾15基の原発は、再稼働することなく、老朽の順に廃炉すべきです
  世界で発生する地震の1割が日本列島で起こり、この1年間で震度5弱以上が68回発生しました。地震の学問・研究は、携わる学者たちによって、阪神淡路大震災以降急速に高いレベルとなりました。「今度の太平洋海溝型プレート地震は、日本海では起こらない」と、関西電力は全社員への教育で説明しています。しかし、最新の諸論文は、ユーラシアプレート(アムールプレート)は、東西の日本列島が太平洋プレートの圧力で歪みはじめ、西は鳥取地震、東は新潟沖地震の真ん中にある、長期にわたって地震が起きていない若狭湾が最も危ない段階に来ていて、列島の地震活動期は「あと40年続く」と指摘しています。さらに、「もんじゅ・ふげん原発」もふくめ、美浜半島(敦賀市)を縦断する長大な活断層の発見も報道されました。
 加えて重大な事は、加圧水型の弱点です。既に当電力センターも参加している“ライフライン市民フォーラム(LLCF)”と関西電力本店との度重なる懇談会でも指摘してきたように、老朽化の脆弱状態を測定する「試験片」  
数も少なくなり、いわゆる原子炉容器が破壊される「脆性遷移温度」も、同じ加圧水型で心配されている玄海原発と同じように上昇を続けている事態を指摘しなければなりません。「加圧水型の制御棒は物理的に上から落ちる形をとっているから、沸騰水型より安全だ」等々の、昔から変わらない「安全神話」を、関西電力トップが述べ続けていることに、国民とともに警戒心を持つことが重要になっています。
 一日でも早く、核燃料サイクルを含めた「原子力立国政策」の終結を、政府と電力会社等に宣言させる国民的な運動を展開すべきときです。

4.原発から撤退し、地産地消の自然再生エネルギーへの転換を急ごう
 福島原発事故を受け、いま世界は脱原発の方向に舵を切り替えています。ドイツは2022年までに全ての原発を廃止、イタリアでも国民投票で廃止に踏切っています。日本でも福島原発事故後、急速に脱原発原発廃止の方向に世論は沸騰しています。浜岡原発の停止をはじめ、停止した原発の再稼働を許さない動きが全国を席巻しています。
 今ほど、「電力企業形態はこれでよいのか」が問われているときはありません。今こそ原発推進政策と決別し、老朽化した古い原発から順次廃炉の方向に政策のかじ取りを行う時ではないでしょうか。その為にも『地球温暖化防止・永続的社会を次世代に残す』臨時国会を国民の声で開催し、温室効果ガス削減目標の2020年40%削減、「原発ゼロ」と自然エネルギーの爆発的な普及プロセスへの明確な目標をつくり、次世代・次々世代に生きる日本の人々のために、国民的な議論で地産地消のエネルギー政策への転換を決めることが必要です。
 私たちはエネルギー産業で働き、働いてきたものとして地震大国である日本の原子力政策に大きな不安を持ち、批判も行ってきました。東電福島原発事故以来、各方面からの要請で原発学習会を約200回7,000人を超える方々に原発の危険性や日本のエネルギー状況などを電力労働者としての経験からお伝えし、皆さんから沢山のご意見や質問などを頂きました。
原発から撤退するうえで、廃炉までの原子力を安全に維持する原子力技術の維持・発展をすすめる技術者の育成強化はどうしても必要なことです。しかし、未来の人達に「ツケ」を残すような危険な原子力発電をいつまでも続けるべきではないと考えています。
既に東電では幾つかの有志グループが勇気を奮って「国有化・発送配電分離」などに関する意見を公然と出し始めています。私たちは「発送電分離」も含めた「日本にふさわしい電力産業はどうあるべきか」などを電力産業グループで働く皆さんや多くの市民とともに「地球にやさしいエネルギー未来」を語り合い、これからの「日本のエネルギー」を考えていく先頭に立ちたいと思っています。           
以 上
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              電力労働運動近畿センター
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