橋下市長は、憲法9条冒涜発言を撤回し、憲法にもとづく政治を行うよう強く求める(声明)

大阪憲法会議が声明
橋下大阪市長は、ツイッターに「世界では自らの命を落としてでも難題に立ち向かわなければならない事態が多数あります。日本ではがれき処理になったら一斉に拒絶、全ては憲法9条が原因」と書き込んだことに関し、3月5日に記者の質問に答え、「憲法9条というのは、何もしなくても平和は維持される。平和を維持するためには、自ら汗はかかないというのが根源的な精神」などと、憲法9条に関する驚くべき認識を披露しています。ここでも、「何もしなくても平和は維持されるというのが憲法の根源的な精神」などという誤った決めつけをして、「相手を悪者に仕立て上げて叩く」という橋下流の手法が典型的に現れています。
憲法9条1項は、政府に対して、国際紛争を解決する手段としての戦争を放棄することを求め、また、2項では交戦権の否認と戦力の不保持を政府に義務付けています。9条1項の趣旨は国連憲章にも明記され、今日では、多くの国の憲法でも取り入れられている平和条項です。9条2項は、アジア太平洋戦争の反省の上に立って、徹底した平和主義を謳うものです。これこそが憲法9条の根本精神であって、1999年ハーグで開催された世界市民平和会議でも、「各国議会は日本国憲法9条のように政府が戦争をすることを禁止する議決をすべき」というアピールも採択されています。「平和を維持するためには自らは汗をかかない」どころか、平和を求める世界の市民は、9条のような規範を確立するために、日夜奮闘しているのです。日本国憲法も、12条で「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」と定めています。橋下市長の見解は、憲法9条の根本精神をまったく理解できていないというほかはありません。
 橋下市長は、この間、大阪市の職員全員に対して、処分という強制手段を背景として、職員にとどまらず市民・国民への「思想調査」を強行しました。これに対して、憲法19条等に違反すると日弁連会長声明など各方面から厳しい批判が出されました。ところが、橋下市長自身は何ら反省するところもなく、開き直ってさえいます。憲法蹂躙の無法行為の撤回と謝罪をただちに行うべきです。また、「日の丸・君が代」起立強制条例の強行に続き、公務員は全体の奉仕者とする憲法15条を蹂躙する「職員基本条例案」や政治の介入によって学校現場に過度な競争主義を導入し公教育を破壊しようとする「教育基本条例案」を提出しようとするなど、平然と憲法を蹂躙し続けています。これらについても、断念および撤回すべきです。橋下市長の言動は、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」と定めた憲法99条にも明白に違反するといわざるを得ません。
 私たちは、橋下市長の憲法9条冒涜発言に断固抗議するとともに、発言の撤回を要求するものです。さらに、橋下市長が憲法尊重・擁護義務を果たし、憲法を生かす政治を行うよう強く要求するものです。
       
2012年3月9日 
憲法改悪阻止大阪府各界連絡会議(大阪憲法会議) 
                  幹事長 梅田章二