第88回関西電力株主総会ドキュメントⅡ

NPO法人エネルギー未来を考える市民株主と仲間の会

ドキュメントⅠは http://d.hatena.ne.jp/KokusaiTourist/20120702
第5号議案・取締役員数を12名に削減すること・・・・岡田美乃利氏
 取締役削減提案に対し、取締役会の意見は、この「株主総会招集ご通知」の47ページに記述されています。「電力需給の安定化、…お客様や社会のみなさまの意識やニーズの変化への対応……など多岐にわたる課題に直面して」おり、「これらの課題に対処していくため」「取締役の定員枠は変更する必要はない」と取締役の現状を守る立場を明確にしています。
 この現状維持の立場は「お客様や社会のニーズ」に全く対応していない間違った態度だと断ぜざるを得ません。
 それは、「大飯再稼動ナシの場合の夏の供給力不足」の件でも、会社の発表は、その都度、数値が異なり、テレビや新聞では「関電は信用できない」と痛烈に批判されていたことは、みなさん、よくご存知の通りです。
 何が「お客様や社会のみなさまの意識やニーズ」に応えているのですか。全くその逆ではありませんか。このような経営陣を持った企業の株主であることは、本当に情けない限りです。
 更に、原発安全神話の誤りを見抜けず、他電源への設備投資と電力設備の保全を怠り、今日の供給危機を迎えた取締役の責任は重大です。本当に重大です。
 正に企業経営陣の資格はないものと言わなければなりません。しかし、責任は未だに誰1人取っていません。

 現在のような供給危機で節電などを求めざる得ない大失態に対し、けじめをつけられないようでは、会社がその都度に発表する言い訳など、いくら美辞麗句を並べても社会には全く信用されません。
 従業員からは「ベアゼロが続いて大変」の声を多く聞きます。また、当社で60歳定年を迎え、再雇用は年収約260万円、「これで生活せよ」とは、と、嘆きの声も聞きます。しかし、反面、取締役になるとき、関電社員だと一旦、関電を退職し、退職金を受け取締役に就任、しかも取締役の報酬額は年4千万円〜5千万円、取締役満足度No1、余りにも住民と労働者犠牲の会社の経営ではないでしょうか。社内取締役を16名から12名に削減して捻出される報酬額は、ザッとした計算では約2億円です。これを社会や従業員に還元する、例えば老朽設備の改善や、従業員のベースアップに活用する、設備費や人件費からするとわずかな金額です。しかし、その姿勢が重要と考えます
 いかがでしょうか。経営陣の責任を明確にするうえでも取締役削減を強く、強く求め提案とします。
 「隗よりはじめよ」という諺があります。決断のときです。この決断が社会の信用を取り戻し、お客様とともに、社会とともに歩んでいく第一歩になること間違ありません。
 会場のみなさまの多くの、ご賛同、何卒よろしくお願いします。

続いて「市民株主と仲間の会」が提案した第3号から11号までの提案をそれぞれ行った。

第3号議案・原発からの撤退、送電線を公的管理へ・・速水二郎氏
招集ご通知46ページの取締役会の反対意見は、福島原発事故以前の安全神話にもとづくもので重大な間違いを犯していますので、私たちの提案に追加する意見を述べます。
滋賀県嘉田知事の最近の言葉をお借りすると、「電力会社と政府による電力不足の脅かしに負けました」とのことで、ついに大飯再稼働となりました。
 大阪府市エネルギー戦略会議に対し、関電自身が「夏の需給と関係ありません」「2〜3年で債務超過となり経営破綻するから動かしたい」と説明したように、今回の電力不足問題は、野田政権の応援による”でっち上げ”以外の何ものでもありません。 これで最も大切な原発の安全性が隠されてしまいました。
 ここで経営者の皆さんにお聞きします。あなた方は出張されることが多いので、きっいろんなホテルに泊られるでしょう。ホテルのフロントに「当ホテルは防火建築で、防火対策には万全を期しておりますので、火災報知器もスプリンクラーも設置しておりません。どうぞ安心してお泊まりください」と言われたら、あなた方は泊まりますか。
 ホテルの危機管理対策である、火災報知器やスプリンクラーの設置は当然です。また、お客さんには避難経路をちゃんと説明するのが常識です。万が一の火災発生時の危機管理があってこそ、本当の安全対策といえるのです。
 原子力ムラでくらすあなた方推進派の「安全神話」は、チェルノブイリ以前の考え方のままで来ました。「5重の対策があってさらにECCSがあるので万全」という主張は今もやっていますが、世界に通用しません。
 1986年チェルノブイリ事故後IAEAが決めた”5つの層の防護”の一部に過ぎません。
つまり第4層目の過酷事故発生時の緊急処置、例えば圧力を外へ排出するベントなどを設置すること、そして第5層では、周辺地域への住民緊急避難対策の詳細を決めること、この二つは大飯再稼働の前に全く出来ていません。
 原発大国フランスやEUは、全ての原発で第4層対策として、過酷時用のベントを付けました。アメリカは第5層対策のため、今回の大震災支援にも適用し、米国籍者や支援米軍は80?圏内に、入らなかったのです。
 こういうことをあなた方は知っているくせに、この重要なIAEA決定を隠し、原発推進固執してきたのです

 二重三重のあやまちを繰り返さないため、まず原発からの撤退を明確にした上で国際安全対策通りに全力上げるべきです。一方再生可能エネルギーが託送料無しでどこででも接続出来るよう、一日も早く送電線部門を全国一本の公的な管理のもとへ置く方向へ転換すべきとの意見を述べ、提案とさせていただきます。

第4号議案・総会議事録は批判的意見も正確に記載すること・・高馬士郎氏
第4号議案の総会議事録公開に対する取締役会の反対意見には失望しました。
 「木を鼻でくくる」という例えがありますが、情報公開に対する一般株主と需要家の声を全く考慮しない独善的なものであります。
 福島事故のあと何かにつけて電力会社の情報公開が話題になり国会でも取り上げられてきました。これは、行政の情報公開法実施から11年を経過しましたが、この法の(目的)「 第一条  この法律は、国民主権の理念にのっとり国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進をはかるために」とあるように、情報公開は行政はもとより、行政以上の権限を持つ電力会社もこの法律の精神を尊重すべきである事に起因すると考えます。
 かって、美浜事故の後、当時の社長が「社内の常識が社外の非常識であってはならない」と発言されたと記憶していますが、現在もなおその教訓は生かさなければなりません。
 福島原発事故の後、電力の担い手が東電から関電へ移行せざるを得ない時、今までの独占的な電力会社から、産業民主化と経営民主化への体質改善をする機会だと考えます。今までに、原発安全神話を妄信しベストミックスを見誤っている事実を、過去の株主総会で何度も取り上げて来ましたが、その記録は株主総会の議事録にはどこにも見当たりません

 原発を供給力の半分までに拡大したことが今日の電力供給不足を招くことになりましたが、この道を選択した経営責任は免れません。しかも現在なお、需給調整契約の推進を怠り、計画停電の脅しで電力不足キャンペーンを行い、原発の安全対策未完のまま再稼動を急ぐのは誤りです。これは一般株主と需要家の多数の声です。この声を総会議事録に記録して残し、一般に公開すべきだと考えます。
 株主総会議事録を充実した内容で公開することが、企業の抜本的な体質改善になるものと考えて提案説明と致します。

第6号議案・監査役全員を環境保護NGOからの推薦とする・・菱田宗一
現在のような取締役から監査役への横すべり、天下りは止めるべきです。
 人類は地球上の「核」を安全に制御する能力を未だ持つに至っていません。にもかかわらず、先進国と言われるところでは、利潤追求第一の体制の下で、原発利用が競われており、大変気がかりでなりません。日本もその例外ではありません。 ところが、政府と関西電力は、原発は事故を起こさないものだという何の根拠もない安全神話で、電力の消費者・国民から、監視、注目の目をそらそうとしています。
 また、今回の監査役の横すべりというのは世の常として、監査役同士の馴れ合いを生む原因にもなりかねません。さらに企業の腐敗につながります。役員の新陳代謝は、その企業の活性度合いを表すバロメーターでもあります。
 このような企業体質を改善するために、NGO(非政府組織)、NPO(民間非営利組織)による監査を強く求めるものです。監査役への企業内からの横すべり人事、および、役所からの天下りの受け入れは直ちに止めるべきです。

第7号議案・地球環境保全のために積極的役割を果たす・・藤永のぶよ氏
本提案は、関電が温暖化を含む地球環境保全に積極的な役割を果たすと言う提案です。
これに対し取締役会は、「電気の低炭素化に取り組む」とのべています。ここに原発を加えていることは間違っています。
原発が、見えないところで如何に電気を浪費する技術であるか、福島原発事故によって私たち一般市民も知るところとなりました
例えば、「使用済み核燃料を長期間にわたって冷却しなければならない」ことや、夜間に余った原発電気を「揚水発電」で消費すること、「使用済み燃料の超長期保管」また、盛んに再処理に必要性が述べられていますが、これにだって膨大なエネルギーとお金がかかるのです。ある学者の研究では原発のKWHあたりのCO2排出量は太陽光発電の最大3倍です。こういう事実がわかっていながら原発を低炭素などとは認められません。
今年6月20日から22日まで、ブラジルで「リオプラス20」の国連環境開発会議が開かれ、温暖化防止のための「グリーン経済への移行」が議論になりました。本来なら、原発苛酷事故で世界の注目を集めている日本政府が原発に依拠しないグリーン経済への積極的な移行を提案するべきでしたが、そうはなりませんでした。
先ほど報告がありました。年間6600万?もの温室効果ガスを排出する関西電力は、発生総量を減らす確かな道筋を示すべきです。いままで非公開であった発電所ごとのCO2排出量や削減目標をきちんと示してください。
6月25日、関電の株価は934円です。大飯の再稼働をいきなりの水漏れ事故など投資家がリスクの大きな関電株から離れていることです。
取締役のみなさん、飯館村の若い酪農家が「原発のばかやろ〜」といってぬぐった涙をわかりますか? 福島原発事故はまだ終わっていないのです。そうなのに再稼働は認められません。
事故の直接の責任は、今日まで原発を推進してきた原子力村でしょうが、原発の電気をのうのうと使ってきた我々都会の住民にもあると思っています。
 だからこそ私たちは、大飯原発の再稼働を認められない!
ことを申し添え提案します。

第8号議案・オール電化を中止し、浪費を抑制する政策へ・・大谷恒夫氏
 オール電化は、後で述べますように環境に貢献せず、取締役会の意見の中の「低炭素社会の実現」に該当しないことから、取締役会の意見は合理性に欠け、誤りです。
 電力使用量が増大し、環境にも貢献しないオール電化を推進しておいて、計画停電、CO2排出量の増加、電気料金の値上げ等を列挙して、原発の再稼働を、と迫る会社の姿勢は、放火して置いて、消防車を呼ぶ『マッチポンプ』の姿そのものです
 我々の提案は、次の事実に基づいています。①オール電化に不可欠なIHクッキングヒーター、設置台数の多い電気温水器、電気ヒーター式の床暖房等の環境性がガス機器に劣ることは、会社が一番知っており、「見える化」すべきであるが、宣伝資料には真実を隠すため、これらのデータを一切記載していない。オール電化住宅のこれらの機器をガス機器に置き換えるともっと環境に優しい住宅になる。②会社がオール電化の優等生と宣伝している「エコキュート」については、最近の研究では実使用状態での効率はカタログ値より大きく低下するとの報告があり、環境性を試算するとガスのエコジョーズに劣る。③「はぴeみる電」の省エネ・省CO2シミュレーションランキングのグラフが、この3月一時休止した。その理由は「オール電化を採用しているのにランキングが下位になるとの苦情が出たから」とのこと。これがオール電化の真実の姿である。④会社は10%〜15%の節電を訴えているが、オール電化住宅にした場会の電力の使用量の増加は、電気温水器の住宅で+93.3%、エコキュートの住宅でも+27.8%大幅な増になる。この事実を大至急、社会に周知すべきである。⑤会社は「オール電化太陽光発電と組み合わせるとますます環境にやさしくなります」と宣伝をしている。太陽光発電の発電量は、オール電化住宅かガス併用住宅かによって変化するものではない。太陽光発電の名を借りて、環境にも、節電にも貢献しないオール電化を推進している問題の宣伝である。
 以上の事から、我々が提案しているように、会社はオール電化政策を直ちに中止し、オール電化についての環境性や節電に関する真実を公表して、これまでの誤った宣伝を詫び、電化機器の取り換えを希望するお客様には、会社の負担で取り換えを推進して、お客様の節電行動を強力に支援すべきです。

第9号議案・グループ従業員全体の労働環境の向上を・・・光平 正氏
 私たちは「従業員の基本的人権、消費者・地域住民の権利、グループ全体の労働環境向上を常に優先させる」章を定款に新設を求めていますが、経営者は「人権の尊重、良好な職場環境・・・従業員が安心して、生き生きと働ける環境整備に取り組んでいる」と主張していますが、この言い訳は間違っています。
 わが社の人権感覚は非常に希薄です。1970年ごろは「新入女子社員に結婚すれが退職する誓約書を取っていました」また、原発に批判的な社員を職場八分に追いやり多くの若い社員が退職を余儀なくされました。このような労務管理を95年には最高裁裁判所が「職場の自由な人間関係を形成する自由を棄損したと」憲法違反の判決を下しましたが、根本的な反省はありませんでした
 わが社の医療職場で働く労働者の人権侵害について申し上げます。2009年7月頃から2010年2月の8カ月間で簡易な操作ミスや部品の一部破損などを起こした事で上司から「事故を起こす確率が高い、他の病院へ行ってくれ」と言われ、断ると、仕事を与えられず受付に立たされた。その後、休憩室や更衣室に隔離され一日中立たされた。この状態が40日ほど続き、「仕事をさせて下さい」と申し出ると「1年でも2年でもそうしていたら良い」言われました。この方は「忙しいのも辛いけど、何もしないで閉じ込められるのはどれだけ辛い事か」と涙を流して話してくれました。「精神的にも肉体的にも限界を超え、コンビニへ行っても自分でお金が出せず、店員に財布からお金を取ってもらう状況でしたと、不眠が続き、何度も自殺を考えました。どのように飛び降りたら死ねるのか?ロープでどのように結べば首つりが出来るのかも考えた」と言っていました。その後も、上司から「人事考課は全て最低の1にする」「ハローワークへ行って来い」と退職強要が続いています。経営者へ訴えていますが、未だに、こんなひどい人権侵害に対処していません。
 次に、わが社の不祥事件についてであります。H23年度上期は全社で6件でしたが、下期は15件と大幅に増えています。車両事故も多発しています。精神疾患社員も減っていません。この背景には、わが社の官僚体質、事なかれ体質、閉鎖体質などが大きく影響を与えていると考えます。とりわけ、2000年初めに導入された「成果主義賃金」が社員を「協力から競争へ」追いやり、コミュニケーションの不足が進行して、「成果を上げても評価されない」などの不満が、電力事業へのやりがいや生きがいを減少させています。そして、この事がグループ全体の勤労意欲を喪失させていますと言っても過言ではありません。
 このように破綻した成果主義賃金制度」を止めて、ILOの方針である「同一労働同一賃金制度」の原則を基に、熟練度、経験を加味した賃金制度に立ち返ることを申しあげまして賛成意見といたします。 有難うございました。
続く