第88回関西電力株主総会ドキュメントⅢ

NPO法人エネルギー未来を考える市民株主と仲間の会

ドキュメントⅡは http://d.hatena.ne.jp/KokusaiTourist/20120703

第10号議案・ライフライン老朽化の改良と人材確保優先を・・松崎保実氏
 「ライフライン基盤強化のため設備投資と人材確保を常に優先する。」の提案に対して、取締役会は、「積極的に経営資源を投入している」ので本議案に反対と言ってますが、間違っています。
 なぜなら、電線が突然ちぎれて垂れさがったり、電柱が根元からポキリと折れ民家に倒れかかったり、電柱の上に乗っている真っ赤に錆びた変圧器からは油が漏れるような事象が発生しています。
 また、今年の架空送電鉄塔の建替えは30基程度、鉄塔は約3万基ありますので全基を更新するのに千年もかかる計算になります。送電鉄塔や電線、碍子の寿命は千年も有りません。
 つまり、工務部門や配電部門などのライフラインの予算を削って原発に回すことは絶対にやめるべきです。

 次に人の問題です。
 「65才まで賃下げ無しで再雇用し、高い技術力を若年層に技術伝承する」の提案に対して、取締役会は「定年退職者を再雇用し知識技能を積極的に活用する」ので議案に反対と言ってますが、間違ってます。会社の言う再雇用とは、60才定年退職者をEスタッフの名称で再雇用し、業務は定年前と同じですが、賃金を低く抑えることです。どれほど低いかと言えば、今年入社の新入社員の賃金より低いこと、法令で定められている最低賃金とほとんど変わらない状態です。
こんな待遇ではモチベーションが上がらないだけでなく、先輩を大事にしない職場になり秩序が乱れます。中高年層の高い技術力を若年層にしっかり継承するため、厚生労働省が提起しているように賃下げなしで65才まで定年延長するべきです。
 私は、昨年の株主総会で、姫路電力所のMさん51才について「公平に評価されていない」と指摘しましたが、1年経過した本日にいたっても、全く改善されていません。
来年の株主総会では、同じ指摘をされないように壇上に座っている人事労務担当の役員は、しっかり対応することを求めて、10号議案の提案とします。

第11号議案・電力融通を容易にするための送電網の整備を・・中島英雄氏
 昨年3月の東日本大震災の結果、多くの原子力発電所等が停止になり、東京電力では電力不足となり、計画停電も行なわれました。
中国、四国、関西、中部電力等、西地域からの融通も周波数変換所を通じてしかできず、東西で50ヘルツと60ヘルツの周波数が違うということと、融通できる電力量ではとても足りないということが明らかになりました。
そこで私たちは「列島縦断直流超高圧送電線路」を早期に建設することが必要であると考えました。
 日本では直流送電線路は北海道函館から東北電力への「北本連系線」、四国から関西電力への「阿南紀北直流幹線」等があります。阿南紀北直流幹線では架空線部分も50.9kmあり、この線区を参考として、全国を直流送電線路で繋ごうという提案です。まだ十分研究はしていませんが、送電線路の長さは200Kmから100Km位を想定しています。北陸から関西位でもできます。
ところで阿南紀北幹線を直流送電にした理由は、関西電力四国電力の間には中国電力東岡山変電所から四国電力の讃岐変電所間が「本四連系線」によって交流連系されていて、阿南紀北を交流送電にするとループが構成され、大阪、奈良、兵庫、岡山、香川、徳島またはその逆方向に電力が流れることが予想される事と、直流送電の方が建設費が少なくてすむことです。
三相交流の送電線はA相、B相、C相と3本の電線がありますが、直流では2本で、しかも帰線は本線より電線は細くて済む。などから、直流送電が採用されたとの事です。日本ではこの例のように一部区間しか直流送電線は建設されていませんが、今こそ「公的機関」によって「列島縦断直流超高圧送電線路」を建設し、託送料なしで運用するよう提案するものです。その他、全国を60ヘルツ交流電源に統一するという案もあります。政府試算では16.5兆円かかるとのことです。工事完了まで何年掛かるかは試算されていません。将来、太陽光発電風力発電などの電力を「直流送電」により運用する時代が来るものと確信しています。

各提案後1件ごとに挙手で賛否をとったがすでに3時間経過しており動員株主の多くがすでに帰って第二会場はガラガラ。株主提案に賛成の手の方が多い場合もあり。でも「反対多数で否決」の議長発言に「どうなっているんや」の声が聞こえる。はじめての参加者も結構いるようだ。

★提案後、福島にゆかりがあるという株主が発言し「東北の人たちに対して舞台の上から哀悼の意が表されていない」との発言があった。そしてオール電化は3.11でもって崩壊したとも述べた

「市民株主と仲間の会」の提案が審議された後、残りの案件の提案理由が述べられた。
大阪市の提案を説明した、川合弁護士は「原発がこけたら関電がつぶれるというようにしたのはあなた達だ。電力会社の役員は経営者に価しない。コストを下げることをしない。売り上げを伸ばすこともしない。経営者として努力なしに収入が多い。そんな電力の役員が地方経済界のトップに居るのはおかしい。」「役員は福島前後で何も変わっていない。何を学んだのか」「免振棟も完成させていないのにゴーを出すのはおかしい。逃げずに答えよ」「原発をそのままに将来のことを考えて消費税を考えるのはおかしい。将来世代のことを考えるならまず原発だ。橋下市長は子だくさんだから将来が気になるんや」と言いたい放題。

京都市の提案を説明した企画局長は脱原発と再生エネルギー導入に関して市議会の決議したものであると発言した。大阪のハシモト劇場とは違う。

一通り提案説明が終わった時、一人の株主が発言を求めた。東京在住で障害者であると名乗って「関西が頑張らなければ日本は沈没する。大阪市はどれだけ発電しているのか。どこから電気を買っているのか。大阪市は市民の安全を守らなければならないのではないか。配当は何に使ったのか」。
議長はこの発言を引き取って大阪市の川合弁護士に答えるよう促した。川合弁護士は「何か悪意を感ずる」と言いながら電気は関電から買っていますと軽くいなし、停電で困る人がでるし、気の毒だろうが、原発で事故が起きると障害者もみんなも無限の被害を受ける」と答えていた。

発言株主間で討論が見られたのは初めてだ。今回も一般の株主からの発言も多く見られるようになったこととあわせて株主総会も身近になってきたように感じた。
すべての議案の表決を終え議長が総会終了を宣言。15:32でした。

【感想や意見(当日の打ち上げご苦労さん会にて)】
☆大飯再稼働について
・豊松副社長は、「54名常駐、それ以外に2時間後・24時間以内に300名駆けつける」「青戸大橋がつぶれてももう一本道がある、それがダメでも船とヘリコプターがある」「斜面が壊れても土石が落下しないよう手はうってある」「オフサイトセンターがつぶれても380?の会議室もある」などと懸命に「対策」を述べていたが、絆創膏的対応で失笑を買うのみだった。
・直下の活断層は、「有識者原子力資料情報室の人も入っている)」が大丈夫といっているので、再調査はしない、と言い切った。

大阪市京都市・神戸市のスタンスの違い
橋下大阪市長は、パフォーマンスと捨てセリフ、あと弁護士ひとりに全てまかして退場、神戸市は市長が簡単に述べあとは企画局長が淡々と語っていた。それに比べると京都市は「市議会で充分論議し、京都市民の決意として述べる」との内容で発言していたので重みがあった。この違いをマスコミは全く無視し、橋下をあげつらっていた。この3市の発言内容は、大阪・兵庫・京都の「原発ゼロ運動」で対府県交渉するのに大事なので、「一覧表にまとめてほしい」との、兵庫労連津川議長の意見あり。

☆動員株主の動向
・大動員をかけていたのは間違いないが、巧妙にバラバラに配置し、目立たないようにしていた。しかし、議案討議の段階では、どんどん退席し、採決のとき第二会場では賛否同数くらいで議長の「賛成多数はおかしい」の声も出ていた。

☆マスコミ取材がいっぱい
・今回ほど、一般マスコミ取材が多かったことはない。NHK・TBS・MBSテレビ朝日朝日新聞神戸新聞等々。2ヶ月ほど前から電力近畿センターへどんどん入って来た。理由は「関電も関電労組もかたくなでどうしょうもない」とのことで、「電力職場の真実の声が知りたい」ということだった。

☆今後の展望
・3・11以降の株主総会は様変わりしているので、会として、あるいは電力近畿センターとして「量的質的拡大」の方向性・目標について臨時総会でも開いて確認する必要がある。
終わり