関越道のバス事故はなぜ起きたのか… 

         科学的な原因究明と安全対策をいまこそ! 4−1
○○○○○○−“逆立ち発想”を立ち止まって考え直す時−
        2012/07/14 兵庫県旅行業協同組合
        担当理事 松岡 武弘(労協 国際ツーリストビューロー理事)
 
 いま、日本には神話が多すぎる。原発の「安全神話」、空、道路の「安全神話」、「成長神話」、「競争神話」、「格安神話」、とうとう“オスプレイ”の「安全神話」まで表れた。しかし、どうも根は一つのようである。強者が弱者を追いつめる経済至上、利益至上主義、アメリカにモノが言えない路線が、「規制緩和」をひろげ、中小事業者、人間第一、生活第一とする人々との矛盾をふかめながらも、未だその路線に固執してその態勢を強めようとしているところから「神話」がつくられている。関越道の事故も、この「神話」が蔓延するなかでおきたものではないだろうか。
 

1.「規制緩和」「格安神話」から訣別のとき!
1.関越道バス事故で何が解明されたのか
  事故からはや3ヶ月が経過しようとしている。被害者への補償、事故原因、責任の所在追求、再発防止策の検討はすすんでいるのか。事故直後は、バス業界の「規制緩和」と過当競争が事故の背景として指摘され、バス代を「買い叩く」旅行会社、過重勤務の運転手、法令違反を重ねる事業者などの事例が具体的に国会やメディアでも取り上げられた。しかし、行き過ぎた「規制緩和」を問う議論はいま国会でもメディアでも殆ど聞けなくなった。
 この間、運転手が逮捕され( 5/1 )、陸援隊(バス会社)が事業許可取消処分(6/22)を受け、ハーヴェストホールディングス(旅行業者)は47日間の業務停止処分(7/4)を受けた。しかし、ハ社は7月2日にすでに事業を停止し、自己破産の準備に入っていた。負債は今年1月末の時点で6億7200万円。(データバンク社調べ)。両社による被害者への「説明会」は開催(5/27)されたが、再開するとされた二度目は事業者が一方的に中止とし、被害者の補償、救済は宙に浮いた形となったまま、事故そのものも風化に向かうのか。

2.ストップ!「事故と風化の循環再生産」 
  国交省が事故後2ヶ月近くたって公表した“安全規制強化策”には、過当競争、安売り競争を招いた「規制緩和」を見直すなどの文言はどこにも見られない。バス業界、旅行業界、市民の間からも事故再発を防ぐ真の対策を求める声もなかなか表面化してこない。そして今もターミナルには、集合場所には多くの利用者が「格安」を求めて集ってくるのである。
 JAL123便の御巣鷹山墜落事故、大阪吹田のスキーバス橋脚激突事故、JR福知山線脱線事故など、交通機関の重大事故は、多くの犠牲者を出した。いままた、LCC(LOW-COST CARRIER=格安航空会社)の登場に際して、「選択肢の提供」という言い方で価格競争のもたらす危険性に殆ど触れない賛同、歓迎の論調が多いことに、こうした事故の体験がすでに風化し、さらに風化をすすめるのかと言わざるをえない。

3.現実から“先”への想像力を働かせ、立ち止まって考えよう
  いま社会はデフレスパイラルの悪循環と閉塞感に覆われている。その時にあいもかわらず「安けりゃいい」、「格安価値観」を蔓延させているようにみえる。 私たちは、一旦立ち止まり、思い切ってこれまでの“価値観”を見直す時期にきているのではないだろうか。
利益第一主義、価格競争至上主義、「格安信仰」の行く手には、すでに現代社会の問題になっている失業、低賃金、非人間的な生活破壊、医療・福祉、年金の「崩壊」の現実がより深刻になっていく危険な道が伸びているのではないだろうか。原発安全神話」のもたらしている現状は、想像を絶する危険なもの。多くの人が、目先でなく将来のことを、立ち止まって考え初めている。