関越道のバス事故はなぜ起きたのか… 

         科学的な原因究明と安全対策をいまこそ! 4−2
○○○○○○−“逆立ち発想”を立ち止まって考え直す時−
2.旅行等を取り巻く環境の変化
1.旅の現状
①旅の潜在需要は増大
旅には人間の本源的要求であることに加え、先行き不安・閉塞感漂う社会、労働強化などからの一時的「解放感」への期待が大きい。さらに、日常に溢れる旅への誘い(旅番組、新聞広告、地域興しなど)は、旅への思いを掻き立てずにおかない。
②しかし旅行需要の長期的減少・停滞状況は深刻 (94年から09年の15年比較) 国内旅行人数(宿泊伴うもの)は、32,029万人から28,910万人へ、2,219万人の減(△9.7%)。
国内旅行消費額(同上)も、123,523億円から92,300億円と、31,223億円の減(△25.3%)。
平均消費額(同上、1人1回当たりは、38,566円から31,940円へと、6,626円の減(△17.2%)。
 これらは2005年頃からいずれも厳しい指標になっているのは、小泉内閣の“痛みを伴う構造改革政策”と無縁とは言えないであろう。(数字はいずれも日本旅行業協会の「数字が語る旅行業○○年」による)
③旅は「安・近・短」指向に、「やむなく」「無理」な計画に
給与所得の全般的低下傾向、雇用不安・失業者の増大、その裏返しとも言える労働強化、休暇の減少が続いている。そんな状況下では、強行日程(夜行も)辞さず、安価追求は一般的・必然的傾向とならざるをえない。ネット予約環境の激変で、急な計画に慎重さも求められない、ともかくもの“旅立ち”も可能になっている。しかし、形の見えない商品で対面販売でなくなると、専門家と相談して最善の選択と安心を得るというより、まずネットで予約できた、価格も手頃か…が、「いま流」の安心感に変わろうとしているようにもみえる。

2.旅行業界の過当競争と「戦略」に「社会性」の有無
①旅行業者の全体数は、上記15年間で、12,622社から10,438社へ2,184社減(△17.3%)。ネット技術の進歩で宿泊・運輸などの「直販」(=直接販売)が増え、「大手ネット業者」の急成長、大手旅行社のネット増販の下で、中小旅行業界の取扱数・額は相当減少しており、過当競争の厳しさは、廃業増と構造的な低収益が常態化している。(数字出典は上記1.②と同様)
②旅行需要の減少傾向の中での過当競争、低収益構造下で、交通分野、旅行業の「規制緩和」が進んだ。低価格と便利さに支えられた「集客力」を圧力に安全性や法規を無視してバス代を買い叩き、低価格競争に勝ち残ろうとする「悪質業者」の存在とともに、価格競争のもたらす弊害が今回の事故で明らかになった。
③しかし、「顔の見える営業」をしている我々中小旅行業者には、安全と安心の旅を提供することが、建前でなく絶対的に求められている。我々には、価格支配力などはなく、個々の取引で交通機関や宿泊施設の選択には、安全・安心の視点で十分な注意を払い、価格競争の下での受注を成功させるために必要で適切な仕入をしながら価格競争に加わらざるをえない。旅行業を通じての社会貢献をの思いこそが我々を支えている。
3.貸切バスなどの業界は… 
①貸切バス業界で、1999年以降10年間で、事業者数が、2,336社から4,196社(79.6%増)、台数は同じく、37,661台から44,617台(18.5%増)に増加。しかし、走行距離は161,400万キロから169,700万キロと5.1%増に留まっている。旅行需要の減少に歯止めがかからない状態での、貸切バス事業者、台数の増加は、間違いなく、バス自身の過当競争、運賃の下落傾向を生む条件となっている。(数字の出典は国交省ホームページ) 
②「規制緩和」策の下、「選択肢」の過剰提供で航空業界、宿泊業界も「価格競争」は「野放し状態」。旅の価格と質の二極分化という傾向もあるなかで、安全・安心を軽視した形だけの“偽装豪華”の競い合いや、「安いからこんなものや」と、人間をモノ扱いしかねない旅のあり方など、旅の文化性を押し下げる傾向さえみられる。
③安全・安心は旅の大前提。特に運輸機関は「安ければいい」「速ければいい」ではその役目を果たせない。日本でもLCCの台頭が急ピッチで進んでいるが、「格安」の代償として、消費者に十分に知らされていない“不利益”を周知させなければならない。わずか1人5000円前後で、500キロをも超える飛行の経費を賄えるはずがないとの常識にたって、こんな価格を、「選択肢の多さ」として認めない見識が必要ではないだろうか。