日航、再上場に強まる逆風 自民「取引の経緯不透明」

「産経」より2012.8.3 07:29

決算説明をする日本航空の(右から)植木義晴社長、稲盛和夫名誉会長、大西賢会長=2日、東京都品川区の日航本社
 9月の再上場を目指す日本航空に逆風が強まっている。経営破綻後、急速に業績が回復した日航の経営再建を、自民党が再三「問題あり」と指摘。2日には昨年3月に実施した第三者割当増資の経緯について、国会で追及した。日航が、同日開いた平成24年4〜6月期の決算発表で、正当な経営改革の成果をアピールする異例の事態に発展している。
 自民党西田昌司参院議員が2日の参院国土交通委員会で追及したのは、日航会社更生法の手続き終了直前の23年3月15日に実施した総額127億円の第三者割当増資について。京セラが50億円、大和証券グループ本社が50億1千万円を引き受けるなど、大手旅行会社や損保など計8社が出資した。西田氏は「日航の二次破綻が懸念された中で8社が増資に応じたのは、更生手続きの終了などで、再上場後の値上がりが確実な情報を知っていたからだ」とし取引の経緯が不透明と主張した。
 これに対し、日航の植木義晴社長は2日の会見で、「数十社に出資要請をした際、更生手続きの終了については説明した」と指摘。その上で、「裁判所の了解を得ている。500億円を目標にしたが、8社、127億円と目標に届かなかった」と述べ、出資要請した各社に公平に情報開示をしており、手続きに問題がないとの認識を示した。金融庁も「法的な問題はない」としている。
 自民党は7月中旬に、「公的支援の恩恵を受けながら、公共性の高い地方路線から撤退し、新規国際線の開設などの積極的な投資をするのは問題がある」として、日航の上場反対を決議。2千億円超の営業利益を出した23年度決算についても、会社更生法に伴う法人税減免などの“特典”のためとして、法人税支払いを求めている。

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岸博幸氏のダイヤモンド国富論より
JAL再上場の“失敗の教訓”その1 1234 9月19日にJALの株式が再上場されます。予定どおり順調に運べば政府に3000億円以上の利益をもたらすことから、政府が関与した企業再生での最大の成功例ともてはやす報道もありますが、それは本当でしょうか。日本の企業再生の歴史に大変な汚点を残したという点で、政策的には最大の失敗例と考えるべきではないでしょうか。

不透明な第三者割当増資
 政策的に失敗と考えるべき理由の1つは、先週もここで書いたように、政府の無節操なまでの過剰支援が航空産業の競争を歪めた点にあります。しかし、それと並ぶくらいに大きな問題があることも忘れてはいけません。それは、不透明な第三者割当増資(公的資金3500億円による資本増強に加えて行われた127億円の第三者割当増資)という、再生過程における透明性の欠如です。

 JALの再生を担当した企業再生支援機構(以下「機構」と略す)で、実際の再生を担う企業再生支援委員会の委員長を務める瀬戸英雄氏は、第三者割当増資が不透明であるとの指摘に対し、会社更生手続きとして“裁判所の許可を得ているから”という趣旨の答弁をしていますが、裁判所の許可を得ていればそれでいいのでしょうか。

 JAL再生に関して必要だった透明性とは、投入した公的資金に関わる透明性の問題、損失リスクを最終的に負わされる国民一般の目線での透明性の問題に他なりません。会社更生手続きは、法廷での公開なしに裁判官の職権手続きで進められ、裁判所の責務も直接の利害関係者間の公平性の担保に過ぎませんので、問題となる透明性とは関係ありません。

 そう考えると、企業再生委員長の瀬戸氏は、管財人団の実質的トップかつ公的機関である機構の首脳の1人という公職にある者として、自らこの説明責任を第三者割当実行時点で果たすべきでした。しかし、国会での答弁のとおり裁判所の許可だけで進めたため、第三者割当増資については、株主名も割当価格もその算定根拠も、すべて国民に伏せられたままです。

 ところが、その内実をみると疑問だらけです。その筆頭は第三者割当増資での割当株価です。