JAL再上場の“失敗の教訓”その2

岸博幸氏のダイヤモンド国富論より
 時系列的にみると、JALの更生計画の認可直後、まず2010年12月1日に機構が1株2000円で3500億円を出資し、次いで翌2011年3月15日に第三者割当増資で民間企業8社が127億円を出資しています。即ち、機構の出資と第三者割当増資の間には4ヵ月の時間差があります。

 更生計画の認可直後は、バランスシートは資産債務がバランスした状態でスタートしており、機構出資時点では純資産はそのまま3500億円なので、純資産法での株価も2000円となります。

 ところが、4ヵ月後の3月15日時点では、その年度の期間利益が1884億円積み上がることが明らかでした。JALが当分の間、法人税を払わなくてよいことも勘案すれば、この利益の大半がそのまま純資産で積み上がることが明らかだったのです。仮に利益を低めに1500億円と計算しても、純資産は合計5000億円になることが分かっていた訳ですから、純資産法でも1株価値は2857円まで上がっていたのです。

 それなのに2000円の株価で第三者に割り当てたのですから、これは有利発行にあたる可能性がありますし、先に出資した機構の3500億円分が毀損した可能性もあります。この点について、第三者割当増資の時点で説明責任が対国民で全く果たされなかったのは、大きな問題です。

 また、2011年3月時点で第三者割当増資を予定どおり行う必要性があったかも、甚だ疑問と言わざるを得ません。その前年11月頃、つまり機構の出資前に民間の割当先を探していた頃は、当該年度の利益予測が641億円しかなかったので、資本が薄いから第三者割当増資が必要という議論は説得力がありました。

 しかし、11年3月になった時点では、予想をはるかに上回る1800億円を超える利益が出ることが分かっていました。それなのになぜ、それと比べてはるかに少額の127億円と言う第三者割当増資を、しかも株価に疑義のある形で強行したのか説明がつきません。本当はこの時点では、第三者割当増資の目的が、安定株主工作に変わっていたと考えざるを得ないのです。

 このように考えると、第三者割当増資については、株価にしても増資目的にしても不透明が過ぎます。裁判所の許可を理由に説明責任を果たさなかったというのは大問題ではないでしょうか。