アミューズトラベル、業法違反「事実ない」−処分理由に反論

web版業界紙トラベルビジョンより
 観光庁は12月18日、アミューズトラベルアミューズ)の旅行業登録の取り消しに向け、アミューズ側が意見を述べる機会である聴聞を開催した。アミューズトラベルは出頭しなかったものの12月15日付で陳述書を提出しており、この中で処分理由の一部は認めつつ、それ以外については「旅行業法違反の事実はないと考えている」と訴えた。
 陳述書は代表取締役社長の板井克己氏の名前で提出されており、まず事故で亡くなった参加者への弔意や関係者への謝罪、自主廃業の意思を示すとともに、引き続き遺族への賠償対応に取り組むことを説明。その上で、処分理由に対しては、「一部パンフレットの記載漏れ等の不備と旅程管理業務の要件を満たしていないことは認めます」としつつ、それ以外は旅行業法違反の事実はないとし、「十分な証拠に基づく明確な法的根拠を示したご判断」を求めている。
 アミューズが異議を唱えた項目とその主張内容は次ページ以降の通りで、観光庁は「違反なし」とするアミューズの主張について検討し行政処分を判断する。観光庁では18日中の判断はないとしており、20日になればアミューズの廃業届を受理することになるため、行政処分をおこなう場合には19日となる。

アミューズトラベル側の主張(1/2)処分理由:
本年10月28日から11月5日までの日程で催行した中国万里の長城付近への募集型企画旅行について、本社営業所の旅行業務取扱管理者をして、旅行の安全の確保のために必要な旅行に関する計画の作成に関する事項及び企画旅行の円滑な実施のための措置に関する事項に係る管理及び監督に関する事務を的確に行わせなかった。

本年10月27日に催行した募集型企画旅行等において、本社営業所の旅行業務取扱管理者をして、記載するべき事項を満たした貸切バス事業者から交付された運送引受書を保管させていなかった。
主張:
同じコースではないにしても、万里の長城ハイキングは過去に何度か催行しており、今回のコースは担当者が現地のガイドから十分情報収集をして企画したため、下見の必要はなかったと認識している。これまでの旅行会社の安全確保義務に関する判例でも、海外については現地の安全は日本の旅行会社自身が下見をすることは困難であり、海外の手配代行会社などを通じた安全確認で足りるとされている。
 携帯電話は通じない場所があるのはどの地域、国、観光地でもあり得る。この場合に、すべて衛星回線を確保しなければならないという法的義務の根拠はない。今回のツアーでは、荷物の託送のための伴走車も用意しており、さらに毎日が日帰りのトレッキングであるため衛星電話などの必要性は考えなかった。
 現地と本社の定期的な連絡は特にしていないが、しなければならないという法的義務の根拠がない。ツアー催行時の天候判断基準をツアーリーダーマニュアルで定めており、現場での判断を最優先させている。
 貸切バス事業者から交付された運送引受書は保存している。運送引受書の一部の記載漏れが業務停止となる法的根拠を示して欲しい。

アミューズトラベル側の主張(2/2)
処分理由:中国万里の長城付近への募集型企画旅行について、旅行者に取引条件の説明を実施しなかった。また、中国万里の長城付近への募集型企画旅行の広告をした際、国土交通省令で定める事項を表示しなかった。
主張:
取引条件書や取引条件の説明をする旨を掲載したメインのパンフレットは、すでにお客様の手元に届いていた。また、正式申込のお客様には事前に旅行業約款をお渡ししており、説明責任は果たしていると認識している。
処分理由:
中国万里の長城付近への募集型企画旅行について、企画旅行の円滑な実施のための措置を講じなかった。
主張:
事故前日に天候確認はした。当日の朝は霧雨で、参加者の体調も特に問題はなく、前日と比べれば歩行時間や距離が短い日程であったため、添乗員はガイドと協議の上、ツアーの中止や代替案などを提示しなかったと聞いている。