総選挙後の憲法をめぐる情勢・市民目線の闘いと課題

羽柴 修弁護士が、くらし学際研究所の定例学習会で上記の標題で講演をされました。同研究所事務局がまとめられた講演内容を次に転載致します。

 12月の総選挙で自公政権が復活し、安倍首相を先頭に、憲法96条(憲法改正要件)の改正を目指す動きが活発になった、と指摘。「この危険な情勢に対し、9条の会の運動の再構築が急務。改憲に反対する全県向け共同アピールを5月3日までにまとめていく」と強調した。
 総選挙後の憲法情勢では、2011年6月に共産、社民以外の政党の議員らで「96条改正議員連盟」が発足。9条の「明文改憲」の前に、改正手続きに手をつける意見が改憲派内で有力になっている。
 自民党は昨年4月、「新憲法草案」(2005年)の改定を発表した。この「新草案」は、9条の廃止、96条の「改正」の他、天皇の元首化、基本的人権の制限の4点を柱にしている。
 一方、「解釈改憲」の動きとしては、非核三原則の見直し(核兵器搭載の米軍艦船の寄港容認など)、武器輸出三原則の緩和(弾道ミサイル防衛に関する日米技術開発など)、集団的自衛権の行使についての憲法解釈の拡大ーーなどが目立っている。
 
 9条に関する国民世論の動向については、毎日新聞世論調査によると、昨年9月15日の紙面では「9条改正は必要」が56%に達したが、総選挙後の12月27日では、9条改憲に賛成は28%、反対52%、集団的自衛権については、賛成28%、反対37%と変化した。昨年9月時点では、尖閣をめぐる緊張状態が調査に反映したのだろう。
 「9条の会」など護憲勢力の課題についてーー。9条の会は全国に7500、兵庫県に244ある。この規模はこのところ増えていないし、メンバーの高齢化が目立つ。
兵庫県弁護士9条の会と、「9条の心」(兵庫県内の9条の会の連絡組織)は2005年以来、講演会、学習会、公開講座など様々な活動に取り組んできた。昨年秋から、憲法関連五団体の間で、憲法改正をめぐる意見交換を重ねてきており、5月3日までに、全県に共同アピールを出す予定である。
 いま、「市民目線の闘い」の重要性が高まっている。自分の手の届かないところで政策が決まっていると感じる「閉塞感」が広がり、政治への無関心や、投票率の低下につながっていく。しかし、政治的指導者によるメディアを通じた宣伝に乗せられてしまう傾向もあり、「橋下・維新」をめぐる最近の動きは要注意だ。
 9条の会は草の根運動といわれ、2006年11月の「はばたけ 9条の心」(神戸・ワールド記念ホール)には7500人の市民が集まった。その際にも、「組織」と「市民」の関係が問われた。この2月はじめ、渡辺治教授が講演で話されたように「解釈・立法改憲に反対する鋭い運動と9条の会運動の再構築による国民連合の結成」がいまこそ、重大性を帯びてきている。 (文責事務局)