オリンピック開催決定ー被災地地元紙は…

福島民報
東京五輪決定】汚染水対策は国際公約(9月11日)
……首相の言葉はあまりにも重い。全世界に誓った国際公約だ。必ず実現してほしい。
 本県から見ると、これまでの政府の対応は場当たりに映る。……
……政府は当初、汚染水対策として建屋周辺の土を凍らせる「凍土遮水壁」の関連費用を平成26年度の概算要求に盛り込む方向で調整していた。今月に入って急きょ、今年度予算の予備費を投入して前倒しすることを決めた。東電任せの汚染対策が、五輪招致問題で一気に尻に火が付いた観を否めない。
 IOC総会で汚染水問題に関し、安倍首相は「状況はコントロールされている。今後も東京にダメージを与えることはない。私が保証する」と言い切った。委員の質問に対し「影響は港湾内で完全にブロックされている」「将来も健康に問題なく、日本にやってくる選手に責任を持つ」と語った。
……安倍首相は7年後の東京五輪開催まで、汚染水問題の解決を全世界に約束した。実現しなければ国際的な信頼は大きく揺らぐ。 ……
抜本的対策には世界の英知と、多額の国費を投入する必要がある。決意だけでなく、本気度、実行力を見たい。 ……
東京招致委員会の竹田恒和理事長が「福島とは250キロも離れている」と記者団に説明した。……原発事故は一地方の問題ではない。世界から見れば、福島だけでなく、日本の問題であることを肝に銘じるべきだ。
岩手日報
今後、スポーツ庁設置や競技施設建設など五輪に向けての動きが活発化する。しかし、東日本大震災の復興を減速させてはならない。
 汚染水漏れなど、福島原発事故は収束していない。福島の多くの人が、いまだに郷里に戻れずにいる。
 本県沿岸部の復興も遅々として進まない。むしろ、五輪開催が決まった今こそ、震災復興の加速が必要だ。
 計画ではメーンスタジアムとなる新国立競技場を含む関連施設の建設などに総額約4554億円が投じられる。費用が膨らんだ場合、国の予算投入もあり得る。
 国の威信がかかっているとはいえ、五輪が優先され、震災復興予算が削られることがあってはならない。

河北新報
◎首都圏に人・モノ集中/風化が心配…… 宮城県利府町宮城スタジアムではサッカー1次リーグが行われ、施設周辺の関連工事も見込まれる。…… 東京では、競技場の新設や交通インフラ整備など開催年に向けて建設工事ラッシュが始まる。復興事業が進む被災地から作業員や資材が引き上げられる可能性もある。
 宮城県生コンクリート工業組合……は「全国の業者からトラックやミキサー車を借りており、首都圏と奪い合いになる恐れはある。作業員が賃金など条件のよい現場に移るかもしれない」と不安視する。
 ……釜石市の野田武則市長は「東京開催は喜ばしいが、被災地に目が向かなくなることを心配する」と懸念を示した。
 ……野田市長は「五輪関連のインフラ整備で被災地に影響が出ないよう、国の対策が必要だ」と注文を付ける。
 石巻市の亀山紘市長は「これからが本格的な復旧、復興の時期だ。風化しないように全国に(情報)発信することが重要だ」と強調する。
……仙台商工会議所……は「首相らは(復興を)世界に約束した。おろそかにしたら世界から笑われる」とくぎを刺す。
 宮城県中小企業団体中央会……は「期待していたアベノミクスは大企業と大都市しか効果が出ていない。五輪開催で、被災地や中小企業に波及効果が及ぶことを願うばかりだ」と切望する。