何が目的なのか−リニア新幹線

噴出する批判、抗議の声!
★東京・品川と名古屋を時速約500kmで走行し、約40分で結ぶものだ。現在の「のぞみ」では1時間半を要するので、50分ほど短縮される。料金は、「のぞみ」に700円程度の上乗せに抑えるとしている。これら乗ってみたいと思う人が多いことだろう。しかし、車窓からの景色を楽しむことはほとんどできない。全長286kmのうち、地上を走るのは40kmほどで、しかもその地上も騒音対策の壁があり、トンネルとほとんど変わりがない。
★乗車時間が50分短縮されるといっても、品川駅は地下40メートル、名古屋駅は30メートルの地下。地上の在来線との乗り継ぎに20分程度かかると、実質の時間短縮はたった30分に。リニア新幹線は多くの利用者にとっては、魅力やメリットをあまり感じられない。
◆川崎の団体「手続き先行」抗議
 川崎市内の沿線住民でつくる「リニア新幹線を考える東京・神奈川連絡会」は18日会見を開き、「市民の声を無視し、手続きを先行させるJR東海の姿勢に強く抗議する」と訴えた。
 建設工事による影響のほか、建設後の騒音や振動、電磁波などのリスクを問題視してきた天野捷一共同代表は、「中間駅や車両基地、非常口(立て坑)など、ポイントを絞った環境影響調査をあらためて時間をかけて行うべき」と主張。県や市にも「交通政策や環境問題の研究者、市民が参加する公聴会を開催するよう求めたい」と話した。
◆県立相原高OB「苦渋の選択」
 中間駅予定地とされ移転が決定的となったことに、県立相原高校同窓会長の中里猪一さん(78)の胸中は複雑だ。「移転しないのが一番いいが、リニア計画は極めて公共性が高い。苦渋の選択だ」と自らに言い聞かせる。
 ことしで開校90周年。駅に隣接し、9・8ヘクタールという広大な敷地に樹木園や演習林、農場、牛舎などがあるのが特色なだけに、中里さんは移転先に「生徒の勉強の場をきちんと確保し、利便性を考えてほしい」と注文を付ける。
◆「敷地全体が貴重な緑のオアシス」と、学校構内で散策会を開催してきた市民団体「教育と緑ある橋本の町づくりを考える会」はショックを隠しきれない。代表の大林トヨ子さん(68)は「住民無視の計画でとても残念」と肩を落とした。
◆期待と不安が半々なのは県立相原高校正門そばでカフェを営む豊泉正人さん(44)。「人がたくさん来てくれてまち全体が潤えばいいが、もしかしたら立ち退きを迫られるかもしれない。リニアがどういうものかもさっぱり分からない」と語る。
◎健康面から不安を抱くのは「リニア新幹線を考える相模原連絡会」代表の浅賀きみ江さん(63)=相模原市緑区。リニアによる電磁波の影響を問題にし、「福島第1原発を経験した今、企業が強調する『安全』を疑い、正しく恐れなければ」と訴えた。