田中 正造の命日 9月4日

田中正造の演説】から

(前略)
 当年もこの増税騒ぎ、昨年も増税騒ぎ、これでまたやはり明年も増税、明後年も増税という筆法にゆくのである。諸君、このやり方で、憲法は打ち壊しっぱなしにしておいて、昨年も今年も明年も、増税増税増税――決まり切っているのである。
 どこまでいって停止するのであるか、今日から諸君にご研究を願っておかんければならないと存じまする。畢竟この日本の人民が誠に従順でお仕合せな話である。もしこの国民がやかましい人民であるならば、納税の義務は無いのである。
……
 今日のごとく少数の人間が、わずかの人間が格外なる幸福を占有して、乱暴狼藉に人の財産を打倒して己が非常な利慾を私するということを、政府が一緒になって結託してその勢を助けてやるということでは、この国家全体の元気というものを失い、日本国という国の肩書きの所有権を軽んじてくる。この少数の佞奸邪智の奴ばかりに横領されて、一般人民を圧倒しておく時には、日本の所有権というものを、これを共に重んじる思想が減じてくる。
 この日本の住民が政府に従順だから幸いだといって、ほとんど人民を無き者のごとくに見て、いくら悪い事をしても知れまい、どんな事しても人民には分かるまい――そのような浅はかな考えをもって、当年も増税、明年も増税。諸君は止まる所を何となさるでござりませうか。
 財源が無いということをよく申します。財源は増税なんぞをしませぬでも、山のごとくにある。山のごとくにあると、田中正造は明言する。
……
 憲法がある。立派に憲法が行われている。租税を出せ。――私は絶対に反対でございます。
……
 憲法は書いたるものばかりの理屈ではない。憲法を解釈するには徳義だ。徳義を守る者が、憲法を所有する権利がある。背徳の人間は憲法を所有する権利は無い。
……
 ただ増税をして、憲法は勝手次第に抛り投げておいて、乱暴狼藉をやり放題にやらして、それで増税をするという政府には反対しなければならぬ。