「規制緩和」が“たび”にもたらしたもの 2-2

9月17日に行われた「交通の安全シンポ」での旅行業からの発言全文を2回に分けて掲載します。シンポジウムは、労協 国際ツーリストビューローJAL争議支援兵庫連絡会の主催で、安部誠治関西大学教授が講演、主催の二者と国鉄労働組合、建設交運一般労働組合がパネラー発言しました。約100名が参加しました。
   規制緩和」が“たび”にもたらしたもの

4. 所轄官庁である国交省観光庁の政策について考えてみます。
観光庁は、オリンピックの年の訪日客数2500万という2.5倍もの過大目標を掲げ、地方にまで「国際競争力のある観光地づくり」を煽っています。いま、内外とも観光需要、いわばパイは限られています。目標に向かわせるその過程の“無理”が“無駄”となり、地域の多くが疲弊するのは必至でしょう。
★国は相変わらず、民間・地方任せで高速道路、新幹線、空港建設などインフラ整備を推進・奨励しています。地方には、赤字の大型インフラ、財政逼迫と「跡地利用」の大きな課題が残っています。佐賀空港は「軍事利用」を迫られていますが、神戸など他でも、「経済特区」やカジノ賭博に狙われるかもしれません。
 許してはならない国土破壊の「リニア新幹線」、トンネルばかりの車窓に観光価値はありません。
★さらに危険なことは、国交省などが、“安全”を “コスト”呼ばわりしていることです。
 安全は公共交通の大前提、言い換えれば、「輸送の安全こそ事業の目的」との共通認識が歴史的に社会的意識として定着してきています。
 行き過ぎた「規制緩和」策は、安全をコスト=経費・損(減らすべきもの)とします。それはJALの稲盛会長の「利益なくして安全なし」の言にまで行き着きます。
 事故多発にかこつけて、行政が「安全コスト」と言い出すのは歴史の歯車を逆転させるもの、社会への挑戦と言うべきで、賃金がコストでないのと同様に、安全をコストと言わせては絶対にダメです。
 こんな歪みの大本は、「観光政策の経済政策への従属」にあります。たしかに、観光と経済の相関関係はありますが、観光政策は、「95年答申」にあるように「人間の生活、健康、発達に必要なもの」の立場からすすめなければなりません。
5.旅が「大衆化」していく過程で生まれた旅の主権者としての自覚は、「リゾート法」(87年)による政策的な観光地や画一的な商品を拒否し、破綻させる力となりました。さらに、ニーズの先取り、多様な商品、地方の魅力発掘へと大手観光資本に戦略転換させたのもこの力でした。
 その後、観光が経済に従属していく中で、それに抗するように、“自分流の旅”“テーマのある旅”“仲間との団体旅行”など新しい旅のかたちが出てきました。かつての「慰安旅行など受け身の団体旅行」から「要求にもとづく新しい団体旅行」の誕生といえるでしょう。 
 しかし、特定秘密保護法は、旅にも経済的、物理的制約以外の規制を罰則付きで持ち込み、旅の楽しさを奪おうとしています。特に原発、基地視察、平和学習旅行などに厳しい規制がかかるでしょう。
6.最後に 企業数で95%以上の中小企業は名実ともに、日本経済の牽引車、社会の良心です。ほとんどすべての国民が何らかの形で関わっています。
 中小企業従事者の「仕事への誇り」「適正価格」の維持、職場存続の願いを、ただ“営業努力、企業努力”だけにとどめず、低価格、安全・良質の商品やサービスを求める消費者との共通の課題にすることが大事だと思います。労働者、労働組合のみなさんの運動に大いに期待します。
 国際ツーリストビューローは、このような環境の下で、「旅行者本位の旅づくり」「それが可能な旅の環境をつくる」という普遍的な課題に利用者と一緒に取り組んでいます。
半世紀を超す株式会社の実績をもとに、より普遍的な組織を求めて労働者協同組合づくりを2009年にスタートさせました。
 その課題の実現には、業界唯一といえるこの組織の強化が必要です。旅行業務に携わる私たち「従事組合員」と一緒にこの課題に取り組んでいただける「出資組合員」の増加が大きな力になります。
 旅の主権者の確立をめざす労協国ツーの運動と組織へのご協力をお願いして発言を終わります。