売れない日本の中古船 フェリー会社のビジネスモデルに異変


WEB SITE「乗り物ニュース」より
 日本の長距離フェリー会社は使っていた中古船を売却し、新造船の建造費用に充ててきました。そのビジネスモデルにいま、異変が起きています。
地中海で活躍する元・北海道航路のフェリー
 日本の長距離フェリー会社が維持してきたビジネスモデルに異変が起きています。
 これまで各社は新造船を建造する際、同時に引退したフェリーを中古船として売却。その売却益を新造船の建造費用にあててきました。
 日本の中古フェリーの行き先として、これまではギリシャ、そして韓国が最大の顧客でした。テレビニュースで映し出された、地中海にあふれる難民の救済などに活躍しているフェリーが日本の北海道航路に就航していたフェリーだったり、一昨年に沈没事故を起こした韓国のセウォル号も日本で建造されたフェリーの改造船だったように、日本のフェリーは一度引退したのちも地中海、黄海インドネシア、フィリピンなどで再び活躍しています。

さんふらわあ こがね」(上)と「ニューながと」(下) ところが近頃は、日本の中古フェリーへ興味を持つ買い手が減少。すでに7、8隻のフェリーが、売り先が見つからないまま国内で係留状態となっています。ある中古船ブローカーは「価格を下げれば売れる」と言いますが、果たして……。
これまで日本の中古船が人気だったわけ
 日本のフェリーは、三菱重工石川島播磨重工業(現・IHI)など大手の造船所で建造された船が多く、中古船であっても品質に定評があります。また2000年代初め、豪華フェリーを数多く建造したものの、その後に経営が破たんした九越フェリー、東日本フェリー、有村産業などの比較的新しい船が中古市場に出たこともあって、例えば韓国と中国を結ぶ中韓フェリーは、ほとんどの船が日本のフェリーの中古船で占められています。
 中国と韓国を15〜24時間ほどで結ぶ、いわゆる中韓フェリーでは、現在およそ20隻のフェリーが運航されていますが、そのうち16隻以上は日本の中古船です。有名なところでは、仁川〜天津間を結ぶ津川国際フェリーで旧近海郵船の「ブルーゼファー」が、仁川〜丹東間を結ぶ丹東国際航運には沖縄航路に投入されていた「クルーズフェリー飛龍」が、また仁川〜大連間を結ぶ大仁フェリーには旧東日本フェリーの「べにりあ」が投入されているといった具合です。
 これらの船は、1987(昭和62)年から1996(平成8)年頃までに日本で建造されており、船齢が20年から29年を迎えて引退の時期が迫りつつあります。しかし、代わりに日本の中古船を購入しようという動きが鈍い状況になっているといいます。
ある規制が日本の中古船に影響
 現在、日本のフェリー会社が供出する中古船は、船齢15年以上のものが多くなっています。ところがセウォル号沈没事故の影響もあって、中国・韓国の両政府は船齢30年(28年という説も)以上のフェリーは就航を許可しないという規制を実施したため、すでに日本から供給される中古フェリーは市場性を失いつつあるのです。
 一方で、日本の中古船の買い手のひとつであるギリシャは財政危機以降、新規の投資に慎重になっており、「このままではフィリピンやインドネシアなど、中中古市場(中古船のさらに中古という船齢の高い船を扱う市場)しか売り場がなくなる」(中古船ブローカー)という声もあります。売れないわけではありませんが、「売却価格は下がる」というのです。
 現在、前述のとおり国内では中古フェリーの売り物が7,8隻たまっていますが、さらに新造船が就航していけば中古船の出物も増えるわけで、今後、新たな売り先を探して行く必要がありそうです。