犠牲を重ねても繰り返す事故!

長野・軽井沢のスキーバス転落、死者14人に 27人負傷

またしても痛ましい犠牲が…4年前のGW、群馬県関越道で観光バスの重大事故が発生した。その時の教訓が十分に生かされたのか…?当時、旅行業者として発信した文「ツァーバス事故の背景と問題」を再度掲載します。この年の月には関西大学で【交通運輸政策研究会】が開かれ旅行業界の立場からの報告はこの文書をもとにしたものです。
 まだ全容が明らかになってない段階で、今回の事故を論じることはできないけれど、後日下記の4年前の事故の背景と問題に沿って検証してみたい。
ツァーバス事故の背景と問題
    2012/05/25 松岡武弘(国際ツーリストビューロー)1.旅行等を取り巻く環境の変化
 1.旅行需要の停滞と潜在需要の増大
 *需要の停滞−可処分所得の低下、雇用不安、休暇の減少 *潜在需要の増大 先行き不安・展望みえない、労働強化などからの一時的「解放」、日常に溢れる旅への誘い(旅番組、新聞広告、地域興しなど)
 2.やむなく「無理」な旅企画への傾斜…安・近・短
   *強行日程(夜行も)と安価追求も
   *「格安!?」の価値観が広がる−事故が起きてから「安全は?」が取りざた
   *選択肢が増え、予約等の利便性も増大しネット予約の増大
 3.中小旅行業界の価格過当競争と仕入条件の厳しさ(=「高」価格、前払、など)
   *旅行需要の停滞、ネット業者増大で価格破壊競争の下、廃業増と低収益の固定化  *多くの中小業者は交通機関や宿泊施設の選択には、安全・安心の視点で十分な注意を払い、価格競争の下での受注に必要で適切な仕入・価格政策を展開
*「顔の見える営業」をしている中小には、何をさておいても安全と安心の旅を提供することが、建前でなく絶対的に求められている。 4.旅の関連業界は… 「安全・安心」より「低価格・利便性」の流れに‥
 *「規制緩和」策の下、「選択肢」の過剰提供で「価格競争」は「野放し状態」
*安全・安心は旅の大前提です。特に運輸機関は「安ければいい」「速ければいい」ではその役目を果たせない。(数多い重大事故の教訓)
2.今回の事故の背景と問題点
 1.各分野(運輸・観光等)で自由競争と規制緩和を推し進めた行政施策に重大な責任
 2.旅行業界でも、消費者保護、消費者への利便性と多くの選択肢の提供との言い分で、規制緩和をすすめ過当競争を煽ってきた。(旅行業登録の条件緩和、ネット業者の登場、単品主催など)
 3.「単品主催」=運輸機関や宿泊施設などただ一つのものを旅行会社が自ら値付けして商品化すること。2005年以前は、主催旅行(=募集型企画旅行)とは、複数の施設・機関・商品を旅行会社が組み合わせて「企画性」のある自らの旅行商品として集客を公募することだった。当然、宿泊のみ(宿のみ)、移動のみを目的とする何の「企画性」もないバスを主催商品とすることはできなかった。
 4.行政には、消費者の保護と安全を言うなら、規制緩和はもちろん、事故を想定しての責任追及、補償強化策を立てるより、事故・トラブルをなくすために必要な抜本的「規制」策が求められる。高速ツァーバスは廃止する!
 5.巷間、旅行会社がバスを買い叩いているのも背景にありとの声も聞こえるが、大半の中小旅行会社は日常的な信頼関係で適切な仕入をしている。運転手が逮捕されたり、1日の運転距離の軽減やバス会社、旅行会社の責任を強化するより、これまでの国の自由競争、規制緩和路線そのものを抜本改革することが第一。
 6.旅行会社は道交法上の責任は問われないから?連帯責任的をとの声もあるが、「企画旅行」を主催(企画)した旅行会社には、特別補償責任、旅程保証責任、旅程管理責任が負わされている。