「世界一貧しい大統領」 ウルグアイ・ムヒカ氏の素顔

週間朝日から引用

 給料の約9割を寄付、自分で運転する中古のフォルクスワーゲンを愛用し、生活費は月10万円ほど──。“世界で一番貧しい大統領”として知られる前ウルグアイ大統領のホセ・ムヒカ氏(80)が4月5日、初来日した。
 ムヒカ氏が注目を集めたのは、2012年の「国連持続可能な開発会議」(Rio+20)での演説だ。
「貧乏とは少ししか持っていないことではなく、無限に欲があり、いくらあっても満足しないこと」消費主義の行きすぎに警鐘を鳴らす演説は話題になった。この演説を翻訳した絵本『世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ』(汐文社)は19万3千部と異例の売れ行きだ。
 読者の反響が大きく、汐文社担当者の仙波敦子さんらは昨年5月、ムヒカ氏に訪日を要請。今回、『ホセ・ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領』(角川文庫)の出版にあわせて来日した。
「読者からの感想をムヒカさんに渡すと、『こんなに離れた日本で自分を受け入れてくれるのがありがたい』と喜んでくれました。『日本で学ぶことがウルグアイの将来に役立つから行くのであって、特別扱いされたくない』と話していた。80歳でも常にインプットする気持ちでいることが、印象的でした」(仙波さん)
 貧困家庭で育ち、1960年代から当時の独裁政権に抵抗し、ゲリラ活動に参加して4回投獄された。国会議員を経て、10年に大統領に就任。惜しまれつつ昨年3月に退任した。
 波乱の人生を送るムヒカ氏だが、その素顔とは。
“福島の復興にはムヒカ氏の言葉が必要”と考え、ウルグアイでムヒカ氏の独占取材をしたフリーライターの平井有太氏がこう語る。
「ムヒカ氏は、大らか。取材中、議会に行く時間になりましたが『今、大切な話をしているから』と、30分も延長してくれた。ゲリラ出身で大統領になり、ノーベル平和賞にノミネートされて、生きる伝説ですよ。でも『手巻きたばこを家で吸うと奥さんに怒られてしまうから、ガードマンのいる小屋で吸っているんだ』と言う、可愛らしい一面もありました(笑)」 日本にこそ、ムヒカ氏が必要なのではないか。