九州新幹線脱線、現場に防止ガードなし 熊本地震

全車両の全48車輪が脱線 全車輪の脱線は新幹線で初
 この区間には「脱線防止ガード」が設置されていなかった。
  上下線514キロ中、設置済みは48キロのみ 9.3%
 この編成には「逸脱防止ストッパー」が装置されてなかった。
 800系9編成中、装置済みは2編成のみ  22.2%
 「早期地震検知システム」による自動停止は間に合わなかった。
  震源地が近い直下型地震だと効果が出ない」
 何と、こんな“ないない尽くし”で、乗客の安全が守られるのか?!回送中だったからと、「胸をなでおろして」ていいのだろうか…!
 豪華列車の「七つ星」もいいけど、万が一に備える(もはや万が一ではない)安全対策にこそ全力投球すべきでないのか!安全運行がを目的とせず、安全対策にかかる費用を“コスト”と考え、利益優先に陥る鉄道事業者の姿がここにある。そして事業者の競争に走る“無軌道ぶり”を放置する国交省の責任は重大ではないか。
以下、朝日デジタルを引用

 九州新幹線は15日、全区間で始発から運転を見合わせた。15日午前6時半時点で、在来線はJR九州熊本電気鉄道など5事業者8路線で運転休止。高速バス8路線が運休している。高速道路は、九州自動車道南九州自動車道九州中央自動車道で計約178キロの通行止め。このほか、都道府県道や市道などでも落石や亀裂などにより30区間で通行止めになった。
 熊本地震で回送中の九州新幹線が脱線した。新幹線の脱線事故は、1964年の東海道新幹線開業以来、4件目となる。事故が起きた現場の線路には、近年整備が進む「脱線防止ガード」がなかった。国の運輸安全委員会が15日、原因調査に乗り出した。

 国土交通省JR九州によると、脱線したのは「つばめ」として走る800系。14日午後9時25分ごろ、回送列車として熊本駅から南の熊本総合車両所に向けて出発し、約1分後に強い揺れに襲われた。当時、時速80キロで走行し、運転士が非常ブレーキをかけたが、6両全てが脱線した。
 事故調査官によると、6両にある全24車軸のうち、22軸が脱線。脱線の方向は左右ばらばらで、台車も損傷していた。レールなどの傷痕から走行中に脱線したとみられるという。
 JR九州によると、九州新幹線では、レールのすぐ内側に金属製ガードを敷き、車輪をはさみ込む形で外れないようにする「脱線防止ガード」を設置する区間があるが、この現場は設置されていなかった九州新幹線では上下線計514キロのうち、設置計画があるのは55キロで、48キロは設置済みだが、設置する場所は「非常に大きな揺れが予想され、活断層であることが確実なもの」を選んだという

 地震対策としては、脱線時にレールから大きく逸脱するのを防ぐ「逸脱防止ストッパー」もある。台車に設置したストッパーが脱線防止ガードなどに引っかかる仕組みだが、今回脱線した車両には装着されていなかったJR九州は、800系を9編成保有しているが、装着済みは2編成だという
 新幹線は、各地に設置した地震計で地震の初期微動を検知し、送電を停止して非常ブレーキをかける「早期地震検知システム」も導入しているが、今回は自動停止は間に合わなかったという国交省は「直下型地震のように震源地が近いと効果が出ない」という。
 これまでの新幹線の脱線は、旧国鉄時代の1973年に大阪府内の東海道新幹線車両基地で起きた事故のほかは、地震が原因だ。
 2004年の新潟県中越地震では、乗客ら154人を乗せ、時速200キロで走行中の上越新幹線とき325号」が脱線。早期地震検知システムは作動したが、直下型地震で作動が間に合わず、そのまま約1.6キロ進んだ。車輪と床下機器がレールをはさみ込む格好になったため、転覆を免れた。
 これを教訓に、JR各社は脱線防止ガードや逸脱防止ストッパーなどの対策を進めている。東日本大震災では、仙台駅付近を時速約70キロで試験走行中の列車1本が脱線したが、逸脱防止のストッパーにより線路から大きく外れることはなかった。
 曽根悟・工学院大学特任教授(鉄道工学)は今回の脱線について「直下型地震による下からの強い衝撃で、列車が浮き上がったのだろう」とみる。「脱線時の被害を最小限にするため、異常時に早く停止できるようなブレーキの強化や、逸脱防止装置の設置が大切。脱線しても、ある程度スムーズに停止できるように車体の工夫についても議論すべきだ」と指摘する。